第一三共グループは、環境問題を私たちの生活や仕事に影響する重要な課題であるとともに、長期的なビジネスそのものにも影響を及ぼすリスク要因であると捉え、環境経営を推進しています。
環境問題は、地球温暖化や異常気象、資源枯渇、汚染、生態系劣化などの多岐に渡るため、当社グループの長期ビジョンであるプラネタリーヘルスの実現に貢献するためには、各課題と事業との関連性を統合的に捉え、トレードオフやシナジーを考慮しながら取り組む必要があると考えております。
当社グループは、気候や自然に関連したリスクや機会を統合的に管理するとともに、ガバナンスや事業戦略のさらなる強化を図るため、TCFD*1およびTNFD*2に基づく統合的な情報開示を行います。
- *1気候関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Climate-related Financial Disclosures)
- *2自然関連財務情報開示タスクフォース(Taskforce on Nature-related Financial Disclosures)
ガバナンス
第一三共グループは、社会課題や社会環境等の外部環境の変化を的確に把握し、事業と一体となり社会課題解決に取り組むサステナビリティ経営を推進するために、「サステナビリティコミッティ」を設置しています。サステナビリティコミッティは、 ヘッドオブグローバルコーポレートアフェアーズが委員長を務め、EHS(環境・健康・安全)、サステナビリティ情報開示、社会貢献について原則年2回議論しています。EHSについては、EHSマネジメントに関する短中長期の方針や目標、計画、活動の審議・報告を行い、その結果を経営会議(EMC:Executive Management Committee)に上申します。重要事項は取締役会に報告されます。
また、人権に関する戦略・方針については、2026年度より、当社グループのコンプライアンスに関する監督・諮問機関である「グローバル エシックス&コンプライアンス コミッティ」のもとで、人権デューディリジェンスをグローバルに推進・監督する体制を構築しています。
第一三共グループEHSマネジメント推進体制図

コーポレートガバナンスコード
EHSマネジメント推進体制の運用
コンプライアンス体制
第一三共グループでは、EHSポリシーを定め、すべての企業活動において環境の保全および健康・安全の確保を重要な経営課題と位置づけ、 EHS に関する取り組みを実施しています。また、生物多様性基本方針・行動指針においては、「遺伝資源の適切な入手・利用と公正かつ衡平な利益配分」や「ステークホルダーとのコミュニケーション、社内意識の向上」を掲げています。さらに、第一三共グループ人権ポリシーでは、国際的な規範や基本原則を尊重し、国連グローバル・コンパクトの署名企業として、人権、労働、環境、腐敗防止の4分野10原則を支持することを表明しています。
第一三共グループEHSポリシー
生物多様性基本方針・行動指針
第一三共グループ人権ポリシー
リスクと影響の管理
気候関連のリスクと機会の特定および評価プロセス
下記のプロセスで、当社事業に関わる気候関連リスクと機会の特定及び評価を行いました。バリューチェーン全体を対象に、気候変動に起因する移行リスク(政策・法規制、炭素コスト、技術革新等)と物理的リスク(気象災害、気温・降水変動等)を抽出し、事業活動への影響が想定されるリスク・機会を関係部門が連携して整理しました。抽出した項目については、関係部門にて「影響度」と「発生可能性」で評価を実施し、第一三共グループにおける重要課題を特定しました。
さらに、シナリオ分析を行い、2030年・2050年の時点での事業活動や財務への影響度を評価しました。これらの分析結果を踏まえ、重要課題ごとに具体的な対応策の検討を進めています。
気候関連のリスクと機会の特定および評価プロセス

自然関連の依存と影響、リスクと機会の特定および評価プロセス
下記のプロセスで、当社事業と自然との依存と影響、自然関連のリスクと機会の特定及び評価を行いました。はじめに、リスク評価ツールである「ENCORE」を用いて、医薬品セクター及びバリューチェーンの上流・下流に該当するセクターにおける自然に関する依存と影響を分析しました。自然に関する課題は多岐にわたることから、当社関連セクターにおける自然への依存・影響について、「医薬品セクターとの関連性」と「自社事業との関連性」の観点から自然関連課題のマテリアリティマップを作成し、当社グループの重要課題を特定しました。さらに、重要課題に関するビジネスリスクについて、将来的に当社事業に及ぼしうる影響とその可能性を関係部門と連携してシナリオ分析で評価しました。
また、活動地域ごとにリスク顕在化の可能性を分析し、当社事業が今後優先的に取り組みを検討すべき場所を特定しました。関係者と連携しながら、追加的な目標設定や対応策の検討を進めています。
自然関連の依存と影響、リスクと機会の特定および評価プロセス
気候、自然関連リスクの管理プロセス / 全社的なリスク管理プロセスへの統合
サステナビリティコミッティは、気候変動による影響や自然への依存・影響が当社ビジネスにどのようなリスクと機会をもたらすのか、そのインパクトを評価・管理し、レジリエンスを高める重要な役割を担っています。気候変動や水、自然に関するリスクなど、事業活動の変更を余儀なくされる可能性のあるリスクに対し対応策を実施し、重大なリスクの懸念がある場合はEMCに報告、さらに取締役会に報告し、総合的リスク管理に統合されます。加えて、長期的なカーボンニュートラルやネイチャーポジティブへの移行を目指し、中期及び短期での目標・実施計画を審議・決定しています。
戦略
環境への負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品において、気象災害の激甚化や生態系の劣化に伴うサプライチェーンの寸断や医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。したがって、当社事業の環境負荷低減・脱炭素化を推し進めていくと同時に、ビジネスパートナーとの協働によりサプライチェーン全体の脱炭素化と生物多様性保全も推進し、カーボンニュートラルおよびネイチャーポジティブの達成と物理的影響を緩和することが重要であると考えています。
この方針に基づき、TCFDおよびTNFDにおける気候と自然関連のリスク・機会の分類を参考に、それぞれのリスク・機会が事業に及ぼす影響を検討しました。
気候・自然関連のシナリオ分析
気候及び自然関連の事業リスクは世界的に顕在化しており、その重要性を鑑みて、当社の事業領域である医薬品セクターにおいても、対応が必要なリスクマネジメント上の課題であると認識しています。
将来的なリスクと機会を検討するにあたり、気候と自然それぞれ2つのシナリオを前提に財務インパクトの評価を行いました。気候は、IEA・IPCCの脱炭素化(1.5℃)シナリオと、脱炭素化が達成されない(4℃)シナリオ*3に基づき事業影響を評価したうえで、気候関連リスク・機会への対応策を整理しました。また、自然のシナリオについてはTNFD提言に基づき、「市場と政策の協調度」を縦軸に、「自然資本・生態系サービスの劣化」を横軸に置いた世界観を想定*4し、その中で「ネイチャーポジティブシナリオ(TNFDガイダンスにおけるシナリオ#1に相当)」および「現状維持シナリオ(同シナリオ#3に相当)」を採用し、事業影響を評価しました。気候・自然のシナリオ分析において上記のシナリオを選定した理由は、移行リスク・物理的リスクの両方においてその極端なケースを想定し、あらかじめ備えることが重要であると判断したためです。
気候・自然関連のリスクを統合的に捉えるにあたり、気候シナリオ・自然シナリオはその定義や構成要素が異なる点もあるものの、移行リスクがより大きくなる「1.5℃シナリオ」と「ネイチャーポジティブシナリオ」、物理的リスクがより大きい「4℃シナリオ」と「現状維持シナリオ」では、それぞれ基本的な整合は取れていることを確認しています。
- *31.5℃シナリオ:IEA SDS (WEO2021)、IEA NZE 2050
4℃シナリオ:IPCC RCP8.5
- *4TNFDガイダンスのシナリオと今回採用したシナリオの関係
参照: Guidance on scenario analysis (TNFD)
採用したシナリオの世界観
| 気候 |
脱炭素政策と技術革新が加速し、気温は約1.5℃上昇に抑制されるが、規制強化により移行リスクが最大化するシナリオ
<採択したシナリオ>
1.5℃シナリオ:IEA SDS (WEO2021)、IEA NZE 2050 |
排出削減が不十分で気温は約4℃上昇し、極端気象や海面上昇などの物理的リスクが最大化するシナリオ
<採択したシナリオ>
4℃シナリオ:IPCC RCP8.5 |
| 自然 |
規制と市場がネイチャーポジティブに進展して自然劣化は抑えられるが、移行リスクが最大化するシナリオ
<採択したシナリオ>
ネイチャーポジティブシナリオ |
自然劣化が深刻化する一方で規制や市場の対応が遅れ、物理的リスクが最大化するシナリオ
<採択したシナリオ>
現状維持シナリオ |
気候・自然関連のリスク・機会
事業活動に対する直接的な移行リスクは限定的であると認識していますが、サプライチェーンについては、今後、炭素税や規制対応、移行対策などのコスト上昇がリスクとして考えられます。また、物理的リスクについては、気象災害などの激甚化や自然資本の劣化による安定供給についての懸念があります。このような分析結果に基づき、移行リスクについてはこれまでの省エネ対策の推進に加え、再生可能エネルギーの活用や脱炭素技術の導入、ビジネスパートナーとの協働により、炭素税や法規制などの負担回避によるコスト低減を機会として創出していきます。また、物理的リスクについては、水害対策を含めたBCPの深化、サプライチェーンの安定性向上に向け、調達先や物流ルートの多様化、災害時の安定供給を支える支援体制の整備、重要資材や生産・供給に係る体制の代替性の確保などの対策を進めることで、当社グループにおける毀損を回避し、持続的な企業価値向上を目指していきます。シナリオ分析で評価・特定された重要なリスク対策については、サステナビリティコミッティおよびEMCでグループ全体の進捗管理を行っていきます。
気候・自然関連のリスク・機会
- *【採用した自然シナリオ】 NP:ネイチャーポジティブシナリオ(自然における持続可能なシナリオ)、BaU:Business as Usualシナリオ(自然における現状維持シナリオ)
- *【影響度】 定量評価した項目は、軽微 (1億円未満)、小 (1億円~50億円)、中 (50億円~100億円)、大 (100億円~300億円)を基準に記載、定性評価した項目は「定性」と記載
- *【事業リスク】 気候変動関連の事業リスクは、影響度と発生頻度、当社のレジリエンスを考慮し総合的に評価。自然関連の事業リスクは、影響度の定量評価や当社のレジリエンスが考慮できていないため、「-」と記載。
指標と目標
事業への潜在的影響および気候・自然関連のリスク・機会を評価・管理する指標と目標として、第6期中期EHS経営目標を定めました。気候変動緩和に向けた目標は、SBTイニシアチブより認証取得し、パリ協定の1.5℃目標と整合した科学的根拠に基づくGHG排出削減目標であると認められました。その他の自然関連課題に対する目標は、ネイチャーポジティブ実現に貢献するために、重要課題毎の目標達成を目指しています。
今後は、気候・自然のシナジーやトレードオフを統合的に考慮した環境経営の推進に向け、目標進捗管理や追加的な対応の必要性を検討する予定です。
定量目標の進捗
| 気候変動 |
CO2排出量
(Scope1+Scope2)
|
2015年度比
△63%
|
-%
(202,927 t-CO2,FY2015)
|
△42.7%
(116,312 t-CO2)
|
| 再生可能電力利用率 |
100% |
4.7%
(FY2015) |
79.9% |
| サプライヤーの1.5℃水準の目標の設定率(Scope3、Cat1,2,4) |
70.6% |
-% |
50.4% |
| 水資源 |
売上高当たりの取水量 |
2025年度比
△10% |
-% |
-%
(0.000427千㎡/百万円) |
| 汚染(サーキュラーエコノミー含む) |
売上高当たりの産業廃棄物排出量 |
2025年度比
△10%
|
-% |
-%
(0.007 t/百万円) |
| 売上高当たりの有害廃棄物排出量 |
2025年度比
△10%
|
-% |
-%
(0.002 t/百万円) |
| 廃プラスチックリサイクル率 |
75%以上を維持 |
-% |
77.8% |
定性目標の概要
上記の定量目標以外の第6期中期EHS経営目標は、環境経営ビジョンおよび目標をご覧ください。