気候変動による影響には、温室効果ガス削減の国際的枠組みに基づいたCO2排出規制の強化、平均気温の上昇や渇水・洪水などの物理的な影響、疾病構造の変化や健康への影響などが考えられます。第一三共グループは第5期中期環境経営方針において「気候変動をはじめとする資源循環、水リスク、生物多様性など、環境課題に先進的に取り組むことで持続可能な社会を実現する」を掲げ、気候変動に対する緩和策や適応策、水リスクへの対応などに積極的に取り組んでいきます。

気候変動リスク

第一三共グループは、地球温暖化や異常気象などの環境問題について、私たちの生活や仕事に影響する重要な課題と認識しています。気候変動をはじめ様々な環境問題に対し責任ある企業活動を行うために、第一三共グループ企業行動憲章および第一三共グループEHSポリシーに基づき、環境経営を推進しています。 また、2019年5月にTCFD*1提言への賛同を表明し、ガバナンスやシナリオ分析結果など、TCFDの開示枠組みに沿った情報開示を行いました。

  • *1TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):主要国の中央銀行や金融規制当局などが参加する国際機関である金融安定理事会(FSB)によって2015年12月に設立されたタスクフォース。

<TCFDの提言に基づく情報開示>
「ガバナンス」

第一三共グループの企業活動全般において、環境の保全と健康と安全の確保に努め、持続可能な社会に貢献すると同時に、リスクが発生する可能性の高い環境(Environment)、健康(Health)、安全(Safety) マネジメントを一体的に運営、推進するため、グループ会社を含む委員で構成する「EHS経営委員会」を設置しています。年2回グローバルEHS経営に関する方針や目標設定、活動の審議をしています。
2019年度は7月および2月に委員会を開催し、気候変動対策、環境マネジメントシステムの最適化やTCFD提言に対応した情報開示などについて審議しました。

コーポレートガバナンス

環境経営推進体制の運用

「戦略」

地球への環境負荷が増大する中、持続可能な社会が実現されなければ、企業活動を行っていくことはできません。特に、生命関連製品である医薬品は気象災害の激甚化に伴うサプライチェーンの寸断や、医薬品供給能力の低下は大きな事業リスクであり、社会リスクでもあります。一方で、CO2排出量は事業から直接排出される排出量(Scope1、Scope2)は少なく、サプライチェーンから排出される排出量(Scope3)が多いことが特徴で、移行リスクは比較的小さいと認識しています。このような環境認識に基づき、第一三共グループは、気候変動に伴う当社ビジネスのレジリエンスを明確にするため、TCFD提言に基づくシナリオ分析とリスク把握を実施しました。

スコープ別CO2排出量比率(2018年度・国内グループ)のグラフ

「リスク管理」

気候変動リスクについては、2019年度に部門横断のタスクチームを立ち上げ、関係部門に対し、シナリオ分析の概要及びIEA・ IPCCに関する勉強会を実施し、移行リスクが大きくなる世界(1.5℃、2℃等)、物理的リスクが大きくなる世界(4℃等)について理解を深め、2030年度までの事業リスクおよび機会について検討を行いました。

リスク

2℃シナリオ 炭素税導入、再エネ設備導入コスト増、不十分な開示によるレピュテーショナルリスク発生
4℃シナリオ サプライチェーン寸断、自社拠点の一時操業停止、気温上昇に伴う空調コスト増、取水リスクによる操業困難化、天然化合物由来製品の生産性低下

機会

2℃シナリオ SBT達成に向けた各種施策
4℃シナリオ 気候変動に伴い増加する疾患への貢献

〈出典〉2℃シナリオ:IEA SDS(WEO2018) / 4℃シナリオ:IPCC RCP8.5

シナリオ分析の結果

事業ごとに事業への潜在的影響およびレジリエンス(強靭性)を整理するとともに財務影響も含め、投資家の視点も加えて総合的な評価を実施しました。

シナリオ分析の結果の図

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「指標」

気候関連のリスクおよび機会を評価・管理する指標と目標として、第4期中期環境経営方針の数値目標に基づき活動を推進し、最終年度である2020年度において、計画通りの進捗となりました。今回のシナリオ分析を踏まえ、第5期中期EHS経営方針および環境目標を設定しました。

第5期中期EHS経営方針・目標(数値目標・主な活動)

第5期中期EHS経営方針 目標
省エネルギー・省資源、温室効果ガス・廃棄物の削減に取り組み、サプライチェーン全体の環境負荷の低減を実現する
  • CO2排出量(Scope1+Scope2):2015年度比25%減
  • CO2排出量(Scope3、Cat1):2020年度比売上高原単位15%減
  • エネルギー使用量:2015年度比売上高原単位30%減
  • 産業廃棄物排出量:2020年度比売上高原単位10%減
  • 廃棄物発生抑制および再資源化の推進
気候変動を始めとする資源循環、水リスク、生物多様性など、環境課題に先進的に取り組むことで持続可能な社会を実現する
  • 再生可能電力利用率:利用率30%以上
  • 水消費量:2020年度比売上高原単位10%減
  • 廃プラスチックリサイクル率:70%以上を維持
  • 水災マニュアルの整備率:日本国内の研究所・生産事業場100%
  • 脱炭素社会に向けた先進的環境技術等の導入を推進
  • 大気および水域への汚染物質排出量の把握および継続的な削減
  • 生態系サービスおよび資源の持続可能な利用の推進
関連法令の遵守およびマネジメントシステムの継続的な改善により、環境・労働安全衛生のリスクを最小化する
  • 有害廃棄物排出量:2020年度比10%減
  • ISO14001取得率:生産事業場100%
  • EHSマネジメントシステムの確立
  • 定期的なEHS監査の実施
  • サプライチェーンとの協働によるEHSリスクの低減
環境教育、健康・安全教育、啓発活動などの社内コミュニケーションを推進し、社員の実践に繋げる
  • 環境事故の未然防止のための教育・啓発
  • EHSに関する全社員教育および専門教育
  • EHSに関する社員モチベーション向上施策
開示情報の充実とステークホルダーとの対話を通じ、社会からの信頼を獲得する
  • 第三者保証のカバー率:100%
  • TCFD提言に基づく定期的な検証および情報開示
  • 持続可能な開発に向けたパートナーシップの推進

環境経営の推進

マテリアリティとKPI

この結果に基づき、第一三共グループのレジリエンスを強化するため、気候災害の激甚化への対策を実施しはじめています。
また、炭素税などを想定した内部的カーボンプライシング*2の導入について検討し、2017年度から設備投資の一部について、評価・検証を開始しています。

*2炭素税や排出量取引制度などを想定し、企業自らが自主的に設定する仮の炭素価格。

CDP 2020気候変動 において「A リスト」に選定

2020年12月、国際環境非営利団体CDP*3より、気候変動対策の調査において最高評価である「Aリスト」に選定され、コーポレートサスティナビリティにおける先進企業として認定されました。2020年度のCDP気候変動質問書への回答により、当社の排出削減、気候リスク緩和、低炭素経済構築などの取り組みが認められたものです。
当社は、積極的な高効率の省エネ設備への投資、着実な省エネ活動、再生可能エネルギーの活用を目指した大規模な太陽光発電の導入など、さまざまな地球温暖化対策に取り組んでいます。また、パリ協定の目標達成に向け、企業に対して中長期的なCO2削減目標とその実現を求める国際的イニシアチブ「Science Based Targets(SBT)」の設定や「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に沿った、ガバナンス、戦略、リスク管理、指標・目標を開示するなどの国際的な動向に先進的に対応する環境経営を推進しています。なお、当社は「サプライヤー・エンゲージメント評価」において最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー・ボード」に2年連続で選定されています。

CDP Aリストのマーク

*3 環境問題に高い関心を持つ世界の機関投資家や主要購買組織の要請に基づき、企業や自治体に、気候変動対策、水資源保護、森林保全などの環境問題対策に関して情報開示を求め、また、それを通じてその対策を促すことを主たる活動としている非営利組織

「RE100」に加盟

2021年7月、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100*4」に加盟しました。当社は、「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」という企業理念のもと、事業活動を通じて社会やステークホルダーの皆さまへ持続的に価値を提供し、同時に当社グループの成長と発展を図っています。第5期中期経営計画では、事業基盤に関わるマテリアリティの一つとして「環境経営の推進」を特定し、「脱炭素社会」、「サーキュラーエコノミー」、「自然共生社会」の実現に向け、バリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取り組みにチャレンジしていきます。
「脱炭素社会」に向けた2050年の長期目標として「カーボンニュートラル」を掲げました。当社グループは、SBTiから認証を受けたWell-Below2℃目標として、CO2排出量を2025年度に2015年度比▲25%、2030年度▲37.5%を設定しており、そのために再生可能エネルギー由来の電力使用率を2025年度30%、2030年度70%を目指し、遅くとも2050年度までには100%達成を実現します。また、水素利用、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)、電気自動車や次世代蓄電池など実装可能な脱炭素技術を積極的に活用することで、脱炭素社会の実現に貢献していきます。

RE100のロゴ

*4 国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ

水リスク

第一三共グループが事業を推進・継続するにあたり、十分な量の良質な淡水がすべての事業所およびバリューチェーンにおいて利用可能であることは、非常に重要であると考えています。
水に関するリスクとしては、物理的リスク、規制リスク、評判リスク等が考えられ、世界的に関心が高まっています。第一三共グループでは、工場・研究所を対象とし、事業に影響をおよぼすと考えられるリスクについて状況を把握しています。
具体的には、WWF-DEG Water Risk Filterを用いて、立地する地域固有の水リスクを分析した結果と、各工場・研究所からの水リスクに関する調査結果を基に、総合的にリスク評価を実施しています。
その結果、中国2工場、ブラジル1工場が当社グループの中で最も水リスクが高い地域に立地する事業所であると評価し、取水制限等の規制強化を主なリスク要因として特定しています(表1)。現状ではこれらの工場を有するグループ会社の売上に占める比率は5%未満となっていますが、これらの工場では、規制動向に注意すると共に、水使用量の更なる適正化に努めています。具体的には、中国2工場でリサイクル水の散水利用、ブラジル工場では雨水を生活用水に利用などの施策を実施しています。
国内ではアンケート調査により、水質悪化、水不足、排水の水質/排水量の規制、水の効率的使用など、物理的・規制および評判リスクが要因となる事業への影響について把握に努め、その結果に基づき分析、評価を進めています(表2)。国内工場では工業用水の使用量低減などの施策に加え、昨今の気候災害の激甚化への対策として、2020年度は、館林事業所において水害リスク評価と水災対策マニュアルの整備、設備浸水の軽減策を計画しました。今後、国内全ての研究所・工場において、水害リスク対策を実施してきます。なお、水使用量、排水量については第三者保証を受けています。

水リスクの高い地域にある事業所の状況(表1)

工場立地 流域河川 取水量
(1,000m³)
排水量
(1,000m³)
使用量
(1,000m³)
北京工場 Yongding He
(永定河)
101.8 79.5 22.3
上海工場 Yangtze River
(揚子江)
42.4 35.7 6.7
ブラジル工場 Parana
(パラナ川)
10.3 10.3 0
Total 154.5 125.5 29.0

水リスク要因と主な影響(表2)

リスク要因 主な影響
水不足 水の供給が停止・制限された場合の研究・生産活動の低下
水質悪化 製造用水への影響(水浄化費用の増加等)
洪水・高潮・豪雨: 河川氾濫による設備等の浸水
水の効率化、リサイクル等に関する義務化 再生水利用の義務化による設備設置等のコスト増加
排水の水質/排水量の規制強化 下水道代上昇によるコスト増加、排水の水質規制強化による設備設置等のコスト増加
干ばつ 原材料となる農作物被害
水供給の季節変動/経年変動 変動による安定操業への影響
水価格の高騰 水価格上昇による操業コストの増加
地域社会 地下水の汲み上げによる地盤沈下等への対応

水資源の適正利用

水資源は医薬品の生産に欠くことのできない重要な資源であり、持続的な利用を推進すべき生態系サービスの一つであると考えています。事業所が位置する国あるいは地域の水資源の状況、水使用にかかわるリスクや課題を把握するとともに、適正かつ効率的な利用、浄化装置による再利用の推進、使用量の削減などの対策を行っています。
国内グループの2020年度の水使用量は7,926千㎥(2015年度比 23%減少 )、グループ全体の2020年度の水使用量は8,395千㎥(2015年度比 22.6%減少)となりました。
第4期中期経営計画の目標である2020年度の水使用量目標、2015年度比5%削減を達成いたしました。
また、グループ全体の水使用原単位(売上高)は、8.7(千㎥/10億円) と2015年度比で30.0%改善しました。
なお、当社グループによる取水によって著しい影響を与える水源はありません。

水使用量(取水量)・排水量(グループ全体)

水使用量(取水量)・排水量(グループ全体)のグラフ

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水使用量(取水量)・排水量(国内グループ)

水使用量(取水量)・排水量(国内グループ)のグラフ

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