ミュンヘン郊外の工場でのEV充電ステーション開所式の様子

太陽光発電の導入で環境価値を生み出す工場へ(後編)

2021年10月26日
Sustainability
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第一三共グループは、今年度からスタートした第5期中期EHS経営方針(2021~2025年度)における環境目標で、2025年度の再生可能エネルギーの導入比率30%以上を掲げるとともに、再エネ100%を目指す国際的イニシアチブであるRE100にも加盟しました。再エネの導入を加速させるために、国内のみならず海外拠点でも太陽光発電をはじめとする再エネの導入を進めています。


前編はこちら

ドイツ発、100%再エネ工場

当社の海外グループ会社では、第一三共ヨーロッパ本社(ドイツ・ミュンヘン、DSE)とパッフェンホーフェン工場(ドイツ・ミュンヘン近郊)、アルファビレ工場(ブラジル)で使用する電力は、再生可能エネルギーによる電力を購入しています。このうち、ドイツのパッフェンホーフェン工場では、太陽光発電のほか木質チップによるバイオマス熱供給なども採用しています。

ミュンヘン郊外パッフェンホーフェン工場太陽光発電パネル。
世帯の年間電力消費量としては約150世帯分、
EVの走行距離に換算すると300万キロメートル相当を賄えます。

ドイツ南部・バイエルン州ミュンヘンから約50キロに位置するパッフェンホーフェン工場。同工場内に設置した太陽光発電設備(出力640キロワット)は、総工費約50万ユーロをかけて2020年夏から工事をスタート。2021年10月から正式に稼働し、同工場の年間電力消費量の8%相当を賄うとともに、年間230トンのCO2排出と年間14万ユーロの電気代の削減を見込んでいます。さらに残る消費電力分は水力発電由来の電力を購入することで再エネ100%工場を実現しています。

この太陽光発電設備の工事をリーダーとして担当したアンドレアス・アペルさんは、当時の苦労をこう振り返ります。

アぺル:ドイツ国内で太陽光発電が稼働し始めたのは15~20年前。その当時に比べて法体系が複雑になり、今回の発電設備の設置に当たって多くの規制について学ばなければならず、とても大変でした。法律面だけでなく、設備面でも苦労しましたね。これまでの工場の電気設備は電力を消費するためだけのものでしたが、発電に必要な設備の導入やケーブル接続の変更なども大変な作業でした。

太陽光発電の導入に際して、周囲の反応は総じてポジティブなものだったとアペルさんは言います。

アぺル:工場のある地域は再エネに好意的で、私たちが進めていることに関心を持ってくれています。建設プロセスの早回しをまとめた動画も制作したところ、好意的なフィードバックをたくさんいただきました。

バイオマスも積極的に活用

同工場では、電力だけでなく熱や蒸気でも再エネの活用を進めています。このうち、熱は年間の必要量(6ギガワット)を地域内の木質チップボイラーから供給を受けています。これにより、年間2,000トンのCO2排出を削減できています。また、生産過程で蒸気も使用しています。現在は天然ガスと石油から蒸気を作っていますが、将来的には木質ペレットから作り出すことを視野に可能性調査を進めています。

欧州の環境対策を担当するEHSスペシャリストのマーティン・シュローダーさんは、屋根置きによる太陽光発電の拡張や木質ペレットからの蒸気などに取り組むことで、同工場での再エネの導入を一段と進めていくと語ります。

パッフェンホーフェン工場の充電ステーションに停車中のEV社用車。
従業員向け駐車場の拡張を予定しており、そちらにも設置する方向で検討しています。

EVの拡充を充電ステーション設置で後押し

パッフェンホーフェン工場では、欧州ならではの取り組みとして電気自動車(EV)充電ステーションの設置プロジェクトも進んでいます。

欧州では、企業の社用車としてプラグインハイブリッド車またはフル充電式EVしか認められていません。ドイツ国内の当社グループでも管理職や社員の一部がEVを使い始めており、充電ステーションの拡充は欠かせません。2017年に初めて設置した8機に加え、2021年には社員用に10機、2024年までには更に100機前後の設置を予定しています。

これに加えて、同構内の訪問者用駐車場にEV充電ステーション12機を設置することになりました。このプロジェクトも担当したアペルさんは、その狙いをこう説明します。

アぺル:充電ステーションが増えれば、走行距離を気にしてガソリン車から変えられない人たちのEVへのシフトを後押しできるはず。訪問者用駐車場に充電ステーションを設置することで、当社だけでなく取引先にもEVへの移行を促せればと思っていました。しかし最終的には、地域の方々にもアクセス可能な充電ステーションを開設することになり、地域の方々から非常に好意的な評価を受けています。

毎日、第一三共パッフェンホーフェン工場の充電ステーションでは、パッフェンホーフェン地域の市民の方々が車を充電しているのを見ることができます。100%の自然エネルギー電力を供給しており、地域の方が支払う料金の一部は、地域の自然エネルギー発電所の建設に投資されています。

パッフェンホーフェン工場では、2019年から3年間かけて地元の団体とのパートナーシップで、工場敷地内の緑化区域1000平方メートルを用いてたくさんの昆虫が生息するビオトープを設置しました。今後も、外部から訪れられる場所としてさらに拡張する計画です。

労働評議会(work council)でつくるサステナビリティグループでは、環境に関わる従業員からの改善提案を受け付けるメールボックスを設置しています。 これまでも、紙の削減や食堂でのプラスチック削減など具体的な取り組みにつながったアイデアが寄せられました。

グローバルな課題に高い倫理観を持って取り組む

最後に、パッフェンホーフェン工場での環境対策プロジェクトの最前線に立つ2人に、プロジェクトへの思いなどを聞いてみました。

アぺル:入社前は第一三共の名前を聞いたことがありませんでしたが、人々の生活と環境を改善しようとする高い倫理観に共感しています。このようなテーマに仕事として取り組めるのは嬉しいですし、個人的には再エネを通じて環境をより良く変えられると信じています。

シュローダー:将来にわたる重要な課題に対して大きく力を入れて取り組んでいる第一三共の姿勢に共感しており、その一員でいられることが幸せです。世界中の第一三共グループの同僚とコラボレーションしながら、これからどのような変化が生まれるか、この目で確かめられることが楽しみです。

第一三共はこれからも、グループ全体の英知を結集して脱炭素時代の環境経営を具体化するさらなる取り組みを進めていきます。


**トップの写真:EV充電ステーション開所式(2021年9月)
(左から)マティアス キューンさん(DSEパッフェンホーフェン工場長)、 トマス ハーカーさん(パッフェンホーフェン市長)、マーチン ヘッセさん(DSEコーポレート部門長)、ステファン アイゼンマンさん(パッフェンホーフェン市公共設備運営会社社長)
copyright: Florian Schaipp/ GFS Film -  on behalf of public utilities company Pfaffenhofen a. d. Ilm

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