小名浜工場(福島)敷地内に並んだ太陽光パネルと担当者

太陽光発電の導入で環境価値を生み出す工場へ(前編)

2021年10月07日
Sustainability
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第一三共グループは、第4期中期環境経営方針(2016~2020年度)でパリ協定の「2℃目標」と整合した「Science Based Targets(SBT)*」の考え方に基づく長期的なCO2削減目標(2015年度比 2030年度▲37.5%)を設定し、日本企業で2番目となるSBT承認を受けるなど、早い段階からCO2排出削減を通じた気候変動対策を行ってきました。取り組みの中心は、省エネルギーの推進と再生可能エネルギー(再エネ)の導入です。世界各国・地域の再エネの普及状況に合わせて、グループ全体として国内外で再エネの導入を進めています。

※パリ協定の目標である世界の平均気温上昇「2℃未満」の達成に向けて、科学的根拠に基づくCO2削減目標を企業に求める国際的イニシアチブ

第一三共ケミカルファーマ小名浜工場に設置された太陽光パネル

再エネによる環境価値の創出

2020年12月1日、福島県いわき市の第一三共ケミカルファーマ(DSCP)小名浜工場において、医薬品業界では自家消費型として国内最大級となる太陽光発電設備(出力3.3メガワット)が稼働しました。これにより、同工場のCO2年間総排出量の約20%に相当する約1,800トン/年のCO2削減が見込めることになりました*。

*想定年間発電量:約4,155メガワット時

小名浜工場での太陽光パネル設置は2018年、第一三共(株)サステナビリティ推進部の上原さん・有馬さん、DSCPの高梨さん・紺頼さんの間で再生可能エネルギー活用についてディスカッションしたことがきっかけでした。その中で、当社施設内に太陽光発電設備を設置するが、設備自体の所有権は発電事業者が保持することで、発電施設に対するイニシャルコストが掛からない第三者所有モデルという実現可能性の高いプランを選定し、DSCPの省エネ委員会に提起しました。本施策はグループ横断的な決定が必要であることから第一三共の環境経営委員会で審議し、NTTファシリティーズの太陽光発電設備設置プランの導入が2019年2月に承認されました。

第一三共グループ全体の環境経営を推進する有馬さん(左)と上原さん(右)

上原:2018年6月に世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)が発表した企業の温暖化対策ランキングで当社は医薬品企業で第一位になったのですが、その際に当社を含む医薬品業界は再エネ導入目標を設定しておらず取り組みが不十分との指摘を受けました。これが、業界に先駆けて太陽光パネル設置に取り組む後押しになりました。小名浜工場の皆さんとは、環境・社会課題の解決に向けた取り組みが企業価値向上にとって重要だとお話して、工場側も積極的に賛同してくれました。

太陽光パネルの設置工事は2020年7月にスタート。ちょうどこの頃、小名浜工場では新棟の建設と既存棟の撤去、変電設備の更新など、過去最大規模の増改築工事がほぼ同時期に進行していました。これらをすべて同時に担当したのが、同工場の電気工事関連の業務を担っていた紺頼さんでした。

工場入口や社員食堂内に置かれた発電モニター

工場入口や社員食堂内に置かれた発電モニター。
社員の環境意識啓発にもつながっています。

紺頼:人員の流れや電源の接続についての検討から、各工事業者との調整など、実際には私とサブ担当者とですべて行いました。停電を防ぎながら進めていくのは本当に大変でしたが、これだけの工事が重なることは製薬会社として貴重な機会ですのでやりがいはありましたね。

太陽光パネルは2020年12月の稼働開始から約半年、順調に発電を続けています。小名浜工場のある福島県いわき市は東北地方の中でも日照時間が長く、太陽光発電の適地でもあるため、予想を上回る発電量とそれに伴うCO2排出と電気代の削減効果が表れています。DSCPの本社と工場側で本プロジェクトを担った高梨さんと紺頼さんは、すでに次のステップを見据えています。

小名浜工場の太陽光発電導入に尽力した紺頼さん(左)と高梨さん(右)

紺頼:これまでのエネルギー施策は使用量を減らすばかりでしたが、工場が生まれ変わるタイミングで環境経営につながる設備をいち早く導入できたのは大きなアピールになりました。小名浜工場にはまだ空地がありますので、増設も含めて環境への取り組みで先頭を走る工場でありたいです。

高梨:SDGsやESG投資がますます注目されるようになっているため、太陽光パネルの設置を早い段階から始められて良かったです。小名浜工場を環境投資のモデル工場としながら、他の工場にも展開できるようにしたいですね。

脱炭素時代を見据えてさらなる取り組みを

今、世界の主要国や企業を中心に2050年までのカーボンニュートラル実現を目指す動きが加速しています。第一三共は、2021年度からスタートした第5期中期EHS(Environment, Health and Safetyの略。環境労働安全衛生)経営方針において2025年度の再生可能エネルギーの導入比率30%以上を環境目標の一つに掲げ、また、再エネ100%を目指す国際的イニシアチブであるRE100にも加盟しました。サステナビリティ推進部の上原さんと有馬さんは、2050年までのカーボンニュートラル実現を目指す動きを見据えつつこのように話します。

上原:当社グループでは、少なくとも2030年までには再エネ導入率100%を目指さないと2050年までのカーボンニュートラルは実現できないでしょう。そのぐらいの勢いが必要という認識で、実装可能な様々な脱炭素技術を事業プロセスに取り組んでいきます。

有馬:当社グループには環境意識の高い社員が多く、いろいろなアイデアや自部門で実際に行っていることを共有してくれます。それが外部評価の高さにもつながっていると思いますので、これからもさらに情報共有と活用を進めていきたいですね。


2050年までのカーボンニュートラル実現に向けた再エネの導入推進は、国内だけにとどまりません。
後編では、ドイツ・パッフェンホーフェン工場とミュンヘンオフィスでの取り組みをご紹介しています。

後編はこちら



 

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上原 勉
有馬 覚
サステナビリティ推進部
第一三共株式会社

管理部   高梨 淳一
小名浜工場 紺頼 良彰
第一三共ケミカルファーマ株式会社

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