ガレージからグローバルリーダーへ - Paul Diolosaさんの挑戦と変革の軌跡New

2026年02月19日
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Paul Diolosaさんは、米国・カナダの医療現場に無菌注射剤を提供する第一三共グループのAmerican Regent Inc.(ARI)の社長兼CEOです。17年にわたり、施設や設備、人材への投資を主導し、最先端技術による製造の高度化を実現してきました。その成果は、何百万人もの患者さんの命を支えることにつながってきました。Paulさんにとって、何百万人の患者さんは単なる人数ではありません。「私たちが生産する注射剤一つひとつに、それが届く人の顔と名前があるんです」と語ります。

原点は父のガレージで学んだ「働くことの価値」

この使命感の原点は、幼少期の経験にあります。質素な家庭で生まれたPaulさんは、昼は自治体職員、夜は自宅ガレージで自動車修理工場を営む父の姿を見て育ちました。12歳から車の修理を手伝い始めたことが、ものづくりへの情熱と実践力を培いました。

家族の中で初めて大学に進学し、機械工学を専攻。大学時代のインターンシップでEstée Lauder(米国に本社を置く世界的化粧品メーカー)に出会い、卒業後は同社で口紅製造機の設計や図面の管理を担当。「何ヶ月もかけて開発した製品に責任を持つ経験ができた」と振り返るこの時期に、リーダーシップやイノベーションへの興味が芽生えました。

製薬業界で見つけた「本当の使命」

ビジネススキルとMBAで得た知識を活かし、より大きな挑戦を求めて製薬業界へ。すぐに製薬という仕事の本質的な意味に気づきます。26歳でAltana Pharmaceuticalsのエンジニアリング責任者に抜擢され、「無菌注射剤は、非常に意義深い」と実感しました。

2008年、ARI(当時Luitpold Pharmaceuticals, Inc.)から声がかかり、「彼らには私が必要で、私にも彼らが必要だと感じた」と入社を決意。17年経った今、その選択が人生を大きく変えたと語ります。

困難を乗り越え、変革を実現

大きな決断には、困難が伴いました。初めてニューヨーク州のシャーリー工場を見学した際、長年の投資不足に衝撃を受け、「当時のCEOに1億ドルの投資を約束させました」。

しかしその直後、FDAから警告書が届き、Paulさんの覚悟が試されることになります。品質担当責任者が6回も交代する中でも、Paulさんはリーダーとして一貫して変革を牽引し、最終的に警告書の解除を実現しました。

その結果、ARIの年間売上高は5億ドルから14億ドルへ拡大。事業の拠点は1カ所から、フランスの工場を含めた5カ所へと広がり、設備投資総額は15億ドルに達しました。

「最大の変化は物理的なものではなく、マインドセットです。以前は現状維持が許容されていましたが、今では『やる価値があると判断したなら、しっかりと適切にやりきる 』という意識が根付いています」と語ります。

American Regentのグローバル展開

イノベーションとグローバルな影響力

オハイオ州ニューアルバニー工場での新設備の着工式

品質と規律を土台に、ARIは次の成長ステージへ。現在、ARIは無菌注射剤メーカーとして業界トップクラスの地位を築き、第一三共のグローバルオンコロジーリーダーへの変革にも貢献しています。

例えば、オハイオ州ニューアルバニー では、新たな注射剤充填施設を新設中。米国市場向けのオンコロジー製品を生産する予定です。

さらに、抗精神病薬やがん治療薬のジェネリック、ファースト・イン・クラスとなる可能性のある変形性関節症治療薬候補など、ARIのパイプラインへの期待も高まっています。「患者さんを助けること、そして社員に安定をもたらすこと。それが、私の一番のやりがいです」と語ります。

「家族」のような職場を目指して

成長と変化の中でも、Paulさんが大切にしているのは「同僚を、同じ食卓を囲む家族のように扱う」というシンプルな哲学です。

その哲学の元、Paulさんはタウンホールミーティングや現場訪問などを通じて、信頼と協力の文化を育んでいます。「同僚と過ごす時間は家族より長い。だからこそ、互いの価値を認め合うことが大切です」と語ります。

Patient Centricityもこの考え方の中心にあります。ARIががん治療薬の包装を始めた際には、「私たちが包装した製品を使うその患者さんは、あなたの母親かもしれないし、息子や同僚、友人かもしれない」とチームに伝えました。「目的を意識することで、仕事への向き合い方は大きく変わります」。

未来への展望と仲間への感謝

市場の変化や新たな課題があっても、Paul さんは成長とイノベーションに集中し続けます。「ジェットコースターのような道のりでしたが、ARIほど働きたい場所は他にありません。」

最大の喜びはチームの成功とその成果を共に祝うこと。第一三共やKen Kellerさん(米国法人Daiichi Sankyo, Inc.のCEO、一時ARIのCEOを兼務)から受けた支援に感謝しつつ、こう語ります。

「何よりも社員が長く安心して働けることが一番。すべては現場で働く人たちのおかげです」

オフィスの外で

仕事を離れると、車の修復や、かつて競技パワーリフターだった名残でウエイトリフティング、家族や友人との時間を楽しんでいます。理想の週末は、自宅の裏庭でのバーベキュー。

「いつか引退する日が来ても、会社の未来が明るく、より多くの患者さんを助け続けていること。それが私にとっての本当の幸せです。」

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