「信頼される医療パートナー」を目指して

MR(医薬情報担当者)は医師・薬剤師をはじめとしたさまざまな医療関係者の方々に対し、自社医薬品に係る情報の提供・収集・伝達の役割を担っています。
私たちは、血栓・塞栓症などの循環器領域や高血圧・糖尿病といった生活習慣病領域、片頭痛やてんかんといった中枢神経領域、痛みの領域そしてがん領域にわたり幅広い疾患の治療薬を扱っています。充実した研修体制の中、自社医薬品に関する情報だけでなく、疾患・病態に至るまで多くの知識を習得し、様々な疾患を抱えた患者さんを診療される医療関係者の方々にお役に立つ安全性・有効性に関する専門情報から、医薬品を服用される患者さんやそのご家族の方の健康で豊かな生活にお役に立てる情報まで、医療関係者の様々なニーズにあった情報を正しく迅速にそして丁寧にお伝えすることを心がけています。
また、コンプライアンスに関する定期的な研修、業務記録の作成・管理の徹底を図り、コンプライアンス違反を未然に防ぐ体制の下、適正な情報提供に努めています。
このような活動を継続することにより、MR活動の継続的な改善・向上を目的とした外部機関による医療関係者を対象としたアンケート調査において、全市場・病院市場・開業医市場すべての市場で2021年度もMR活動に関する総合評価第1位をいただきました。
私たちはすべての医療関係者とその先にいる患者さんを思い、一人ひとりに寄り添った情報提供活動を通じて「信頼される医療パートナー」を目指してまいります。

アンケート評価

MR総合評価 2021年
全市場
(全回答医師)
1位
(N=4,267)
病院市場
(病院医師)
1位
(N=2,500)
開業医市場
(開業医師)
1位
(N=1,767)

出所:株式会社インテージヘルスケアによる調査(2021年度)
※アンテリオより社名が変わりましたが調査会社は2016年から変更ありません。

患者さんの安心・安全な服薬を目指して

自覚症状が少ないことから治療継続率が比較的低いとされている骨粗鬆症治療において、治療継続率の向上による寝たきりのない社会への貢献を目指し「投与時期お知らせカード・シール」や「サポート手帳」の提供、次回投薬予定日を手紙やメールでお知らせする「投薬時期お知らせシステム」を構築し治療継続のサポートを行っています。約14万人の方がこのシステムへ登録しており、これらの治療継続サポートを行うことで12ヶ月治療継続率は約90%、18ヶ月治療継続率は約80%と高く、多くの方の骨粗鬆症治療の継続サポートにお役立ていただいています。
吸入薬の服用に際しては、吸入に必要な「吸う力」を確認するための「笛」を医療機関へ提供しています。医療関係者による服薬指導の際のサポート、服薬に対する患者さんの不安を少しでも軽減することを目的としています。特に小さなお子様をお持ちの親御さんの安心感につながっているとの反響を頂いています。
また、患者さんの飲み間違いの防止・識別性の向上や服薬コンプライアンス向上を目指し、薬剤名の両面カタカナ印字製剤や水なしですばやく溶けるOD錠(口腔内崩壊錠)を提供しています。
患者さんが安心して治療していただけるサポート体制の充実、製剤・表示・包装の工夫による患者さんの安心・安全な服薬サポートに貢献してまいります。

医療関係者への質の高い情報提供

医薬品はその性格上、ベネフィット・リスクバランスの上に成り立っているため、製薬企業が有効性・安全性に関する質の高い情報を創出し、医療現場へ情報提供することによって適正使用の推進に役立てていくことが重要です。特に新薬の発売当初は、開発段階での有効性・安全性が確認されてはいるものの、医療現場の多様なニーズに応えるだけの情報が十分そろっているとはいえません。当社グループでは、関係ユニットが協力し、それぞれ専門的な視点から必要な情報や不足している情報を特定し、上市後に実施する製造販売後調査*1などから、医療関係者の協力を得て情報を創出しています。その結果を医学専門雑誌、学会発表、適正使用資材などを通じてタイムリーに医療関係者へ情報提供していくことで適正使用を推進し、医療への貢献を目指しています。
なお、製造販売後調査などの実施においては、関係法令やガイドラインの遵守、倫理性、科学性といった観点で確認しています。さらに、医療機関との契約に基づいて行うことで透明性を確保し、利益相反を適正に管理することによって、公正な情報の創出に努めています。

*1 GPSP(医薬品の製造販売後の調査及び試験の実施の基準)省令に基づき製薬企業と医療機関が契約し、製品を対象として製薬企業が実施する日常診療下での調査をいう

医療関係者からの情報収集とフィードバック

国内医療関係者から収集する市販品や治験薬の副作用などの安全性情報は年間約30,000件以上、国外提携会社からの情報を含めると年間約80,000件の情報が集まります。安全管理統括部門では、これらの情報をグローバル安全性データベース管理システムに入力して評価を行い、規制で定められた基準に従って遅滞なく規制当局へ報告しています。さらに安全性情報に関する分析をグローバルで行い、得られた最新情報を医療関係者にフィードバックしています。

情報収集・提供の流れ

拡大可能な画像が別ウインドウで開きます

患者さん・医療関係者の方々からの問合せ対応

製品情報センターは、医療関係者や患者さんから月約6,000件、年間約7万件の当社医療用医薬品に関するお問合せをいただいております。お問合せに対しては、コンプライアンスを遵守しつつお問合せいただいた方に寄り添う誠実な応対を心掛けています。2022年度からは製品情報センターの応対者を領域制にし、専門知識を有する応対者が直接回答できる体制を構築することで、今まで以上に的確に、かつ迅速にお応えできるようにしております。また、お問合せの背景を理解した上で医薬品情報を調査し、正確にわかりやすく説明できるよう、医学・薬学知識の研鑽に加え、質問スキルや説明スキルなどの研修を日々行っております。
 お問合せ対応には、人工知能(AI)をはじめとした多くのシステムを導入し、活用しております。瞬時に最適なQ&Aを応対者に提示するシステムや、お問合せの製品ごとに担当領域の応対者にお繋ぎする音声認識システムなどもその一部です。また、テレワーク環境においてもお問合せ対応が可能なシステムを導入し、有事の際などもできる限り継続した応対ができるようにしております。
一方、製品情報センターへお問合せいただかなくても情報を入手いただけるように、2021年10月よりAIを活用したDIチャットボット「いつでもDI24」を医療関係者向けサイトへ公開し、弊社ホームページに掲載している「よくある問合せ」とともに、24時間365日的確な情報が入手できるような環境を整えております。
これらの取り組みにより、保険調剤薬局の先生方を対象としたコールセンター評価調査*において、2016年度より2021年度まで6年連続第1位の総合満足度評価をいただきました。
今後も、製品情報センターでは、医療関係者や患者さんから寄せられるお問合せにお応えするだけでなく、お問合せやご要望を貴重なご意見として社内に共有し、さらなる改善につなげていくとともに、人とデジタルの融合により、製品情報を正確・迅速・簡便に入手・活用いただける環境を整えることを通じて、医療に貢献してまいります。 

* 外部調査会社への委託による調査
   

【VOICE】お問合せいただいた方の期待に応える照会対応を目指します

第一三共株式会社
日本事業ユニット 営業本部
製品情報部
がん・麻薬グループ
中村 博子

製品情報センターは医療関係者や患者さんから寄せられる当社製品に関するお問合せ対応を担当しています。私たちは、お問合せいただいた方に寄り添い、期待に応える照会対応を目指し、「専門性の高い情報提供」「応対品質の向上」「お客様の声の活用」に取り組んでいます。 お問合せの背景を理解し、その先にある真のニーズは何かを考え、皆様のお役に立つ情報を提供することを目標に日々照会対応を行っています。そのために、がん領域をはじめ疾患領域ごとに担当者を配置し、より専門性の高い情報提供を行うための各種研修を実施して知識習得に努めています。
医療関係者や患者さんからのお問合せの99%は電話にて寄せられます。皆様の声に耳を傾け、お問合せいただいた方だけでなくその先にいらっしゃる方にも寄り添ったお話が出来るよう、応対品質の向上にも取り組んでおります。そして、いただいた貴重な声を社内にフィードバックすることで、育薬や製剤の改良につながった事例もありました。 お問合せいただいた方々のお困りごとの解決に貢献し、信頼される医療のパートナーとなれるように、これからも期待に応える照会対応を目指してまいります。

製品情報センターへの問い合わせ件数(患者さん、医療関係者)

製品情報センターへの問い合わせ内容分類(2021年度)

「お客様の声」を活かす仕組み

患者さんや医療関係者から寄せられる「お客様の声:VOC(Voice of Customer)」は、当社にとって何より貴重な情報であると考えており、製品情報センター等へ日々寄せられる「お客様の声」を収集・分析・評価し、VOCポータルを活用した社内への迅速な情報共有や、抽出された課題を提案することにより、多様な医療ニーズに向けた改善策の立案や、問合せの背景にある臨床的な疑問(クリニカルクエスチョンの種)を見つけ、医療のお困りごとの解決に繋げています。製剤や包装の改良の実現に繋がった一部の内容につきましては、第一三共ウェブサイト内の「皆さまの声をかたちに」にて公開しています。今後もお客様の声を活かしたより良い製品の創造を通して、変化する医療ニーズに迅速に対応していくことが、社会への貢献につながるものと考えています。

「皆さまの声をかたちに」は、こちらをご覧ください。

患者さんとのコミュニケーション

当社グループでは、患者さんとのコミュニケーションを重視しています。医療機関処方された当社グループの製品情報についてのお問合せを直接お受けする製品情報センター、薬の開発や医療関係者を通じた間接的なコミュニケーション、および薬について理解していただくための補助的なコミュニケケーションツールである「くすりのしおり」の当社ウェブサイトへの掲載など、患者さんとのコミュニケーションをさまざまな形で行っています。

メディカルアフェアーズ活動

メディカルアフェアーズは、当社製品の新しい医療情報を生み出し、薬を育てる活動を推進しています。
私たちは、医学的・科学的な専門知識に基づき、公正性、独立性、透明性を担保しながら、医療関係者の方々と交流を行い、クリニカルクエスチョン(薬剤の使用に際しての患者さんや医療現場における疑問点)を特定し、それらを解明するための臨床研究を企画・推進をすることで、新たなエビデンス創出活動に取り組んでいます。臨床研究結果は、国内外学会での発表や医学論文への掲載など、情報発信活動も積極的に実施しています。
第一三共グループが世に送り出す医薬品に関して、価値の高いエビデンスを生み出し、社会に広く発信する活動を通じて、世界中の患者さんやそのご家族、医療関係者の方々、ステークホルダーの皆さまに、最適なメディカルソリューションを届けるパートナーとなることを目指し、日々の活動にあたっています。

COMPASSを通じた取り組み

当社のCOMPASS("Compassion for Patients” Strategy)活動は、会社スローガンの"Compassion for Patients(ひとに思いやりを)"に基づいて、世界中の人々の『笑顔のある生活』の実現に貢献するため、患者さん・医療従事者との双方向コミュニケーションを通して、第一三共グループ員が患者さんの生活・困りごと・望む姿を知り、自分たちに何ができるかを考える機会を提供し、その実現をサポートしています。研究開発本部では2014年から病院研修や講演会等を実施し、患者さんや医療従事者と社員が直接交流する機会を設けています。


ドキュメンタリー映画「奇跡の子供たち」の上映会

希少難病のAADC欠損症患者である子供たちとそのご家族の日常と、画期的な治療法である遺伝子治療を受けることによって生活が改善していくまでの10年間を追ったドキュメンタリー映画「奇跡の子供たち」の上映会を行いました。当社では2020年から米国のUltragenyx Pharmaceutical Inc.と遺伝子治療に関する提携を開始しており、業務に携わっている社員が遺伝子治療と難病の患者さんの実情を知る貴重な機会となりました。

奇跡の子どもたち



DS茶話会の実施―患者さんとの対話―

これまで患者さんによる講演会の開催など、当社社員と患者さんが交流を図るためのさまざまな取り組みを実施してきましたが、社員にとっては緊張や遠慮によって率直な質問ができない、本音が言えない・聞けないといった課題があったため、2021年は少人数で対話を行う「DS茶話会」をオンラインで実施しました。参加いただいた患者さんからは「製薬会社に対して温かいイメージを持てるようになった」とのコメントをいただいたほか、当社社員にとっても仕事の意義を再認識し、患者さんのニーズを詳しく知ることができました。

 

創薬活動におけるPatient Engagementガイドブックの作成と社員への啓発
この数年間で、患者さんの声を医薬品の研究開発に取り入れることの重要性・必要性は世の中でもよく議論されるようになりましたが、製薬企業の社員が患者さんと直接交流する際には個人情報保護の観点や法律上気を付けなければいけないことがあり、なかなか行動に移せないという実態がありました。そこで、製薬会社の社員が医薬品の研究開発の一環として患者さんと交流する時に、法律や倫理上気を付けるべき点や互いに信頼関係を築くために必要なことを武田薬品工業のPCET(Patient Centricity Expansion Team)と共同でとりまとめ、患者会にも監修していただいて『創薬活動におけるPatient Engagementガイドブック』を作成しました。 2021年6月には患者支援会社の代表と大学の先生をお招きしてPCETと共同でPatient Engagementの理解と行動を促進することを目的としたパネルディスカッションを開催し「そもそもなぜ創薬にPatient Engagementが必要なの?」というテーマから「新型コロナの対応の中でのPatient Engagement」まで幅広く議論を行い、両社合わせて600名以上の社員が聴講しました。

 

DIA日本年会でのCOMPASS活動
2020年、リモート開催されたDIA(Drug Information Association)日本年会で、難病のお子さんのご両親にお子さんの誕生から今に至る日々で折々に感じたことをお話しいただき、グラフィックファシリテーションの手法でpatient journey mapを作成するセッションを行いました。セッションの中で患者会、医師、規制当局及び製薬会社社員も交えて参加者が小グループに分かれて患者さんとそのご家族の困りごとに対して、明日から自分に何ができるか当事者意識をもって話し合いました。参加者からは「患者さんにとって当たり前のことがわかっていないことに気づいた」、「患者さんひとり一人を感じて、寄り添う製薬会社でありたい」などの声が寄せられ、あらためて病に苦しむ患者さんの力になりたいという強い思いを感じた一日となりました。 2021年のDIA日本年会では、前述のPatient Engagementガイドブックの紹介とともに、創薬の研究段階からPatient Engagementを行うことの大切さについて、大学の先生、患者会代表、そして武田薬品工業のPCETメンバーとパネルディスカッションを行いました。患者会の代表者からの「治療をするために生きているわけではなく、やりたいことをやるために生きている」とのコメントは、「人々の健康で豊かな生活に貢献する」当社のパーパスを改めて考える機会となりました。

 

COMPASS活動について
病気の先にある「患者さんの生活」を考える ―Our Stories―

  

 

パンデミックにも負けない治験薬の安定供給

当社は患者さんや医療関係者の方々とのコミュニケーションを通じて、医療現場における真のニーズに寄り添い、安定的な治験薬の供給に努めています。 2019年初頭から世界は新型コロナ感染症による社会的な混乱の最中にあり、治験に参加されていた患者さんは、ロックダウンや病院の満床等により医療機関を訪問できなくなり、治験薬の投薬が継続できなくなる恐れがありました。特に抗がん剤の治験のように、投薬を中断することが命に関わる可能性のある患者さんもいらしたと思われました。そんな中、患者さんや医療関係者の方々からのご要望を頂き、当社では速やかに投薬を継続させるための治験薬供給の新体制を構築しました。具体的には、医療機関との連携により、患者さんが遠くの治験施設を訪れなくても、家や近隣の病院で治験薬を受け取る、または投与を受けることができる仕組み(Direct to Patients)を確立しました。こうしてコロナ禍においても、国内外の被験者さんに無事治験薬を届けることができました。
このように、困難な状況にあっても患者さんや医療関係者の方々に安心して治験に参加して頂けるよう、先進的な取組みにも果敢に挑戦してまいります。

服薬アドヒアランスを高めることによる医療貢献

第一三共エスファでは、ジェネリック医薬品を継続的に上市することで医療アクセスの拡大に貢献しています。
飲みやすく、飲み間違いが起こらないような工夫をした製品やオーソライズド・ジェネリック*3に力を入れて展開することで、患者さんの服薬をサポートするだけでなく、医療関係者の方々や介護者のみなさまの安全・安心を追求しています。 例えば、錠剤の両面への薬剤名などの印刷、PTPシートへのバーコード表示やオリジナルシンボルの表記により、識別性を高める工夫をしています。また、抗がん剤などの比較的リスクの高い薬においては、患者さん以外のご家族、特に小さいお子さまが誤って服用してしまうリスクを未然に防止するとともに、薬剤の誤接触や飛び出し防止を目的としたPTPシート用外装ケース(名称:C-ガード/チャイルド‐ガード)を開発しています。 こうした取り組みのほかにも、バラボトルに植物由来の原料を90%以上配合したバイオマスプラスチック容器を採用し、環境へ配慮した工夫にも取り組んでいます。

*3 先発医薬品メーカーからの許諾を受けて製造される後発医薬品

to Page Top