「いつも患者さんを心の真ん中に。」上野さんのイラストとご本人

「当たり前」の裏側にある想い──現場での対話が照らすPatient Centricityのかたち

2025年11月27日
Patient Centricity
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「日々使っている薬が、こんなにも多くの人の想いと努力によって支えられていることを知って、これから薬に接するときには、より一層大切に取り組もうと思いました」

2025年9月に第一三共の製薬技術開発センターで開催された対話会に参加したCRC(治験コーディネーター)の方の言葉です。

当社のPatient Centricity特命担当 上野司津子さんがリードするPatient Centricity Working Team(以下、PCWT)の主催で開催されたこの対話会では、首都圏の医療機関から集まったCRCや薬剤師の皆さんが、製薬現場の最前線に立つ当社テクノロジーユニットのメンバーと直接対話しました。テクノロジーユニットは、2023年に設立した、バイオロジクス、製薬技術、サプライチェーンの3つの機能を統合したユニットで、開発初期から商用生産・供給までの「治商一体」をコンセプトにしています。

対話会に参加したCRCや薬剤師の皆さんがそこで目にしたのは、製品の品質と安定供給を守るため、責任感と熱意のもと、日々奮闘する社員の姿でした。

無菌環境で使用するアイソレーターの模擬装置で作業を体験する上野さん

製薬現場と医療現場をつなぐ「対話」

PCWTは、患者さん中心の価値創造を目指す、社内横断チームです。メディカルアフェアーズや経営戦略、サステナビリティなどのメンバーを中心に、さまざまな部所と連携しながら、患者さんの声を企業活動に反映させる取り組みを進めています。

今回の当社製薬技術開発センターでの対話会は、医療現場で薬を扱い、患者さんのすぐそばでケアや支援を行うCRCや薬剤師の皆さんが、薬の製造現場の実態を直接知ることで、より深い理解と信頼を築くことを目的として企画されました。参加者の皆さんは、同敷地内にある実際の工場製造ラインの見学を通じて、温度管理や調製工程の厳密さ、品質保証の仕組みなどを体感。

工場には実際の製造で使われている機械の一部を体験できるブースもあり、参加者は分厚いグローブでの作業が見た目よりかなり困難なことや、器具が思いのほか重いということを実感しました。

「薬をつくるには、想像以上に多くの工程と人の手が関わっていることを知りました。その一つひとつが、患者さんの安全につながっているのだと実感しました。」

このような声が多く聞かれた対話会は、工場見学だけでは得られない、医療現場と製薬現場の「共感」を生む場となりました。

「当たり前」を問い直す姿勢

第一三共が大切にしているPatient Centricityとは、単に患者さんの声を聞くことではありません。患者さんの視点に立ち、企業活動のあらゆる場面で「患者さんとその関係者にとって本当に必要なことは何か」を問い直す姿勢そのものです。

対話会では、当社テクノロジーユニットのメンバーがCRC・薬剤師の皆さんからの質問に丁寧に答え、医療現場の課題やニーズを共有する時間が設けられました。たとえば、調製時の薬剤安定性やパッケージの工夫、現場での使いやすさなど、医療現場ならではの視点が多く寄せられました。

「薬剤師として、薬の背景を知ることで、患者さんへの説明にも説得力が増します。製造現場の方々の熱意を知ると、自然と責任感も強くなります。」

製薬企業の仕事はただ単に薬を作って、届けるだけではない、ということを改めて実感できるメッセージも届けられました。

上野さんのリーダーシップとグローバルな挑戦

PCWTのリーダーである上野司津子さんは、当社社員から選出された初の女性取締役であり、Patient Centricity特命担当、日本ビジネスユニット長、メディカルアフェアーズ本部長を兼任しながら、国内外で精力的に活動しています。患者団体との協働、医療関係者との対話、社外イベントへの参加など、外部との接点を積極的に設けています。欧米のPatient Advocacy Teamと連携し、ASCO(米国臨床腫瘍学会)やESMO(欧州臨床腫瘍学会)での患者団体との面談なども行い、グローバルな視点で患者中心の価値創造を推進しています。

PCWTは「共創」の力を信じ、社内外のステークホルダーとともに歩みを進めています。

社員の気づき──「誇り」と「共感」が高まった瞬間

今回の対話会を通じて、参加した社員からは「自社製品が現場で“使いやすい”と評価されていることに誇りを感じた」「CRCの方々の声を直接聞くことで、患者さんとの距離が縮まったように感じた」といった感想が寄せられました。

アンケート結果では、約8割の社員が「今後もこのような機会を継続してほしい」と回答しており、製薬現場と医療現場の対話が、社員の意識や行動にもポジティブな変化をもたらしていることがうかがえます。

医療現場で得たリアルな学び

テクノロジーユニットのメンバーが医療施設を訪問した際の経験も、大きな気づきをもたらしています。

医療現場の薬剤師や医療従事者からは、凍結乾燥品の溶解時間と、それに伴う投与スケジュールの調整、患者さんの待ち時間の課題など、実際の使用環境ならではのリアルな声が寄せられました。また、調剤室のコンパクトさや、各薬剤の添付文書通りの厳密な温度管理状況、抗がん剤暴露対策を含む医療安全対策など、研究所では想像しにくい医療現場の工夫や課題にも直接触れることができました。

医療現場では患者さんの待ち時間を可能な限り短くする工夫が行われていたり、調製操作の柔軟性向上や簡便性が求められているなど、「研究員が気にしているポイントと、薬剤師の先生方が気にしているポイントは異なる部分がある」「医療現場のニーズをもとに、より熱意をもって製剤開発に取り組みたい」といったコメントが多く挙がりました。

医療現場のリアルな声を知ることで、今後の製剤設計や情報発信のあり方について新たな視点を得ることができました。今回の経験や気づきは、患者さん・医療従事者目線の医薬品開発をさらに推進する原動力となっています。

PCWTメンバーによる手描きイラスト入りスライドの前に立つ上野さん

「いつも患者さんを心の真ん中に。」

この言葉が、お互いの現場での対話や訪問を通じてCRCや薬剤師、当社社員の心に刻まれたように、PCWTの活動は、製薬企業と患者さんの距離を縮めています。

これからも、こうした「当たり前の裏側」にある想いをくみ取り、社内外へと発信することで、第一三共が目指すPatient Centricityの実現に向けて、確かな歩みを続けていきます。


Patient Centricityに向けた取り組み

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