医師であり、製薬業界で医薬品の開発に携わってきたMarielle Cohard-Radiceさん。現在、開発オペレーショングローバルヘッド、エグゼクティブ・バイスプレジデントとして、第一三共のパイプライン全般の臨床試験を進めるプロフェッショナルチームを率いています。
様々な経験を経て、大きな変化の時にも俊敏に対応できる力をつけられたというこれまでのストーリーと、リーダーとして大切にしていることを語ります。
自分の想いを大切に進んだ分野で積み重ねたキャリア
幼い頃スポーツに熱中していたMarielleさんは、栄養学の道でキャリアを築こうと考えていました。その一方で、生物学や生理学にも惹かれていました。そして、友人や家族と話しをする中で、心惹かれるものへの想いを忘れてはならないと説得され、最終的には医学部への進学を決断しました。その結果、消化器専門医となりました。現在は、病院での臨床経験を活かしながら、革新的な医薬品の提供に貢献しています。
これまでのキャリアで、数々の難局を経験してきましたが、それが迅速な決断をする上での軸やリーダーシップの土台となっているそうです。
困難な時こそ、得られるものがある
Marielleさんは製薬業界に入ってまもなく、後に10年以上にわたって標準治療となる、慢性C型肝炎の治療薬の開発に携わりました。
彼女は当時のことを次のように語ります。
「常々口にしていることなのですが、病院で毎日診ていた患者さんにこれほど大きな影響を与える薬の開発に携われたことは、非常に貴重な経験でした。臨床と医薬品開発の両面から患者さんの治療に関わることができ、本当に幸運だと思います」
もちろん、Marielleさんにも、困難な時期はありました。関わった医薬品が安全性の理由で回収となり、それによって大規模な組織変更を余儀なくされてしまいました。ですが、そんな経験の中でも、得られたものがあったと言います。
「検討結果をプレゼンし、リーダーたちとの難しい話し合いに臨み、正しい決断を下すプロセスは、私に大きな実りをもたらしてくれました。時に厳しい決断もありましたが、善とは何かということと、その対極には何があるのかを学ぶことができたのです」
変革期に必要なリーダーシップとは
「Marielleさんは2012年に臨床の現場から離れ、臨床開発のオペレーショングループを率いるべく第一三共に入社しました。それは、第一三共が循環器領域を軸とした企業から、オンコロジー領域で競争優位性のある企業へと転換をし始めている最中のことでした。そうした変革の中、Marielleさんはこれまでの経験を活かし、第一三共がオンコロジー領域での地位を確立するために必要な体制の構築をリードしてきました。
変革の時には、チームが一丸となることが必要です。Marielleさんのチームは部門横断型のプロジェクトチームと協力し、第一三共のオンコロジーポートフォリオを市場に出すために必要なガバナンスの構築や、働き方の最適化という課題に取り組みました。
目標の達成に向け、Marielleさんは専門的な知識をもつメンバーを適所に配置し、各々が期待に応えられるようにしました。その一方で、移行期にある会社の新しいビジョンを常に意識していたそうです。
「課題を真に理解し、社員一人ひとりが必要な相手と連携できるようにするには、もっと質問していくことが必要だと学びました。私たちの仕事は非常に複雑であると同時に、様々な規制を理解し、遵守する必要があります。そこで重要なのは、他者と向き合い、成功するために必要なツールを持たせることと、障害を取り除くこと。そして、すべての答えを持っている人などいないと心得ることです」
様々な経験を積むことが成長につながる
Marielleさんは近頃、開発オペレーショングローバルヘッドに加え、第一三共オンコロジーフランスのプレジデントにも任命されました。その職務では、研究開発のリーダーたちと密接に協力し、欧州における研究開発拠点の構築に取り組んでいます。この拠点は、オンコロジー学会とのつながりや関係を醸成することで欧州での臨床試験数を継続的に増やし、第一三共をより広く知ってもらい、欧州における第一三共のオンコロジー臨床開発の存在感を高めるために設置されるものです。
「リーダー、そして、医薬品開発者として成熟するためには、異なる多くの経験を積むことが必要です。製薬業界で働いていれば常に順風満帆ということはありえませんが、あらゆる機会や学びの経験によって、技量が磨かれていきます。これまでに考えもしなかったことが可能になる、そのような機会をもたらす変化を受け入れられるよう、常に心をオープンにしておいて欲しいと思います」
~Marielle Cohard-Radice(MD, EVP)、開発オペレーショングローバルヘッド~
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居心地のよい環境から踏み出してみることが大切
Marielleさんは、最後に、働く女性に向けたメッセージを語りました。
「特にサイエンスや経営に携わる女性にとっては、心地よい環境に身をおくことは快適ですが、そこから一歩踏み出し、それまでとは違う経験をすることが重要です。女性には、理解し、真実を求め、サポートや代替手段を提供するという特有の能力があると思っています。だからこそ、相手が顧客、社員、患者さんなど、いずれの場合でも重要な役割を担うことができるのです。」