研究開発戦略と取り組み

私たちは、2030年ビジョンに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を、2025年の目標に「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を掲げ、高い専門性を有する研究者たちが最先端のサイエンス&テクノロジーを駆使して新薬の創製とその新薬を1日でも早く1人でも多くの患者さんの元に届けるべく、情熱をもって日々挑戦しています。科学を患者さんへの価値に替えていくという私たちの飽くなき挑戦が研究開発戦略や開発パイプラインを形作っています。

研究開発戦略 3 and Alpha

研究開発においては2025年の目標とその先のBeyond 2025を見据えた、3 and Alpha戦略を掲げ、がん領域におけるDS-8201、DS-1062、U3-1402を3つの重要な柱とし、研究開発費や人的リソースも集中しています。がんは国内においても世界においても、罹患率、死亡率が高い疾患のひとつであり、人々の生命と健康にとって重大な問題です。未だ多くの人が苦しむがんの領域において、患者さん、医療現場に一日も早く治療薬をお届けするよう活動を進めています。
そして“Alpha”と称したカテゴリーでは3ADC以外のがん領域や希少疾患等の有効な治療法がない疾患、既存の治療薬では十分な効果が得られない疾患の患者さんに対し、革新的な医薬品を提供することを目指し、取り組んでいます。希少疾患は患者さんの数が少ない故に病態の解明が困難で、治療の選択肢に限りがあります。治療薬に至るか否かさえ未知数な領域であっても、挑戦を続けなければ治療の可能性を諦めることになります。私たちのサイエンス&テクノロジーが希望につながると信じて、挑戦を続けています。

第一三共の研究開発戦略「3 and Alpha」

がん研究開発の加速化

私たちは“がん”を研究開発の重点領域と定めており、がん領域のADCをはじめとするバイオロジクスや低分子化合物に関する研究機能、トランスレーショナル研究開発機能、そして臨床開発機能が密接に連携し、相互の専門機能が補完し合うことによる高いサイエンス力と実行力を実現する組織体制を整えています。その統一した方針・戦略のもと、迅速な意思決定が可能な専門家集団としてがんの研究開発を加速化し、一日も早く患者さんに究極の治療を継続して提供できるよう尽力しています。

Beyond2025に向けて

医薬品には低分子や抗体などそれぞれ薬物分子の種類があり、総称して「モダリティ」と呼ばれています。科学の進歩に伴い、多彩なモダリティによってこれまで困難だった創薬標的にアプローチできるようになりました。私たちは低分子医薬品に次ぐ自社独自のモダリティとしてADC技術を創製してきました。そのほかにも様々なモダリティの研究に取り組んでおり、これまで有効な治療法がない疾患、既存の治療薬では十分な効果が得られない疾患の患者さんに対して、治療の可能性をひとつでも増やしていくことを目指して研究開発を進めています。

当社が優位性を持つモダリティ・技術を活用し、創薬基盤技術を拡充

ADC技術:Antibody Drug Conjugate(抗体薬物複合体)

ADCとは、抗体と薬物をリンカーと呼ばれる部分を介して結合させたモダリティです。第一三共のADCは、リンカー技術に由来する高い薬物抗体比と血中での高い安定性、さらに、搭載薬物の高いがん細胞死滅作用とバイスタンダー効果*により、優れた薬理効果と安全性を実現しています。これまでの土台をもとにさらに技術改良を進めており、薬物治療満足度が低い疾患に対して安全で優れた効果を示す次世代のADCの提供を目指しています。
*直接ADCが取り込まれた細胞だけでなく、その周囲の細胞(バイスタンダー細胞)にも影響がみられるという現象

核酸医薬技術:ENA® (2'-O,4'-C-Ethylene-bridged Nucleic Acids)、MED-siRNA (2'-O-methyl RNA and DNA-modified small interfering RNA)

第一三共の独自技術を用いた修飾核酸であるENA®オリゴヌクレオチドは、相補的なDNAやRNAに対する高い結合力や優れたヌクレアーゼ耐性等の特性を持っています。同様に、第一三共独自のMED-siRNAは、高い遺伝子発現抑制活性を示し、低コストで生産できる特性を持っています。これらの核酸テクノロジープラットフォームの活用やさまざまなオープンイノベーション機会との融合で、新たな治療法の提供を目指しています。

細胞治療

細胞治療は、細胞がもつ多様・多彩な機能を活用し、技術加工した細胞を疾患治療に用いる治療法です。患者自身の細胞を用いてキメラ抗原受容体を遺伝子導入したCAR-T細胞は、がんの治療に応用されています。iPS細胞を用いて作製された心筋シートは重症心不全の治療法として開発中です。私たちは、細胞治療が将来汎用的な治療技術となることを目指して、効率的な細胞製造法や先端的加工技術の確立・改良に取組むとともに、新たな細胞治療製品の創生を進めています。

遺伝子治療

遺伝子治療は、遺伝子を体内に投与することにより目的とするたんぱく質を発現させ、その作用により疾患を治療するものです。これまで治療が困難だったさまざまな疾患への応用が期待されています。遺伝子を細胞に運ぶ入れ物をベクターと呼びますが、私たちはアデノ随伴ウイルスをベクターとする遺伝子治療薬の製造技術を米国Ultragenyx社から導入し、希少疾患や重篤な疾患に対する遺伝子治療薬の研究開発に取り組んでいます。

mRNA技術:新規核酸送達技術

従来から培ってきた第一三共独自のmRNA技術を活用し新型コロナウイルス(COVID-19)のワクチン開発にも取り組んでいます。mRNA(messenger RNA)によって目的とするたんぱく質を標的細胞に発現させることで、中和抗体の産生や細胞性免疫を活性化させ、ウイルス自体の増殖を抑えることで治療効果をもたらすのがmRNA医薬で、脂質ナノ粒子がカプセルの役目を担って安定的に標的細胞内への送達を担う技術です。

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