Backstory04 創薬研究からのバトンをつなぐ(後編)

2人の集合写真
プロセス技術研究所 研究第二G グループ長 岡野克彦Katsuhiko Okano
製剤技術研究所 創剤研究第二G グループ長 荒井宏明Hiroaki Arai
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さまざまなシーンを思い描き、使いやすさを追求

薬には、内服剤や注射剤、貼付剤などいろいろな形態がある。その薬の効果が最も発揮できるように、使う人が扱いやすいようにと、さまざまな工夫が凝らされている。
例えば、口から服用する内服剤には錠剤、粉薬、シロップ剤などの種類があり、服用する患者さんの年齢などに適した剤形を選択するのも工夫の一つである。

一方、薬剤そのもの以外の面からの工夫としては、万が一落としても割れないように、プロテクターを薬の入ったガラス瓶に装着する方法もある。薬を扱う医療従事者たちの健康被害を防ぐためであり、貴重な薬剤を無駄にしないことにもつながる。
「患者さんにとって飲みやすい、ということも重要ですが、薬が使われる場面を想定し、扱いやすいような工夫もしています」と語るのは、製剤化を担当する荒井さん。

この他にも、水がなくても口の中で溶けるようにした薬の例がある。水道などのライフラインが途絶えても服用が可能なため、災害時に医療チームが携帯する薬として採用されている。

荒井さん
製剤開発の様子

生命関連企業としての使命感に支えられて

新型コロナウイルス感染症で、世界中がロックダウンに近い状況の中でも、製薬企業の研究開発は続く。
薬の候補が実際に薬として多くの人に使われるようになるためには、治験(臨床試験)を行い、薬の効果や安全性等を確認する必要がある。
今、まさに行われている治験を止めることはできない。第一三共の製薬技術を担う研究員たちも、新薬を待つ人々のために、臨床試験に使用する治験薬を供給する努力を続けたという。

「工業化研究や治験薬の供給を止めてはいけない。自分たちが頑張ることで、世の中に少しでも貢献したいという気持ちでした。これは、製薬会社に勤める人間として、大事にしなければならない姿勢、忘れてはいけないことだと思っています」

自分が直接関わった医薬品が、患者さんに処方されるとなれば、感慨もひとしおだ。
岡野さんは、自身が携わった薬が大病を患った家族に処方されていることを知る機会があり、胸が熱くなったという。

「自分が携わった製品が世の中に出て、患者さんの手元に届いて役に立っていると知った時、今まで試行錯誤に費やしてきた多くの時間は、こういうことのためだったのだと実感します」

第一三共が挑戦を続けるのは、創薬の研究開発に限らない。それを薬として広く患者さんたちに届けるため、新薬を安定的に供給する製薬技術の研究開発も、重要な挑戦のフィールドの一つだ。

※所属等は掲載当時の情報

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