2021年04月23日
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マラリアは蚊が媒介するマラリア原虫によって引き起こされる感染症で、激しい高熱を繰り返し、適切に治療しないと死に至ることもある病気です。主にアフリカで流行し、現在でも年間2億人以上が感染し、40万人以上が死亡していると推定されています。WHO は2020年4月に、新型コロナウィルス感染症に伴う医療サービスの中止によって、サハラ砂漠以南のアフリカ諸国におけるマラリアによる死者は、前年から倍増して72万人になる恐れがあると発表しています。

また、既存薬に対する耐性を獲得した原虫の出現も報告されており、マラリア制圧への取り組みにとって脅威となっています。このような薬剤耐性マラリアの拡大を食い止めるために、新規のメカニズムに基づく新薬の開発が望まれています。

開発途上国における感染症を征圧するための創薬促進に向けて、2013年4月に日本国政府、製薬企業5社、ビル&メリンダ・ゲイツ財団による日本発の官民連携パートナーシップとして公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(Global Health Innovative Technology Fund、以下「GHIT Fund」)が設立されました。第一三共は設立当初から資金拠出するとともにGHIT Fundの仕組みによるパートナーシップを活用し、顧みられない熱帯病(NTDs *1)の1つとして知られるシャーガス病治療薬の臨床候補化合物の探索や、天然物による結核やマラリアの治療薬探索など複数のプロジェクトに取り組んでいます。

マラリアに関して第一三共は、2020年度にMedicines for Malaria Venture (以下「MMV」)とマラリアの新規治療標的分子に対する化合物スクリーニングに関する共同研究契約を2つ締結しました。

一つは、マラリア原虫が有する2種のタンパク質(熱帯熱マラリア原虫CLK3及びアセチルCoAシンセターゼ)を阻害する化合物のスクリーニングプロジェクトです。これらのタンパク質は近年抗マラリア活性との相関が確認された新規の標的分子で、当社の持つ2万化合物をスクリーニングすることにより、既存薬とは異なる新しいメカニズムの抗マラリア薬候補化合物の取得を目指しています。
もう一つは、マラリア原虫そのものを用いた抗マラリア活性化合物のスクリーニングプロジェクトです。本プロジェクトでは当社の5万化合物を用いて、薬剤耐性株を含む複数のマラリア原虫に対して有効な抗マラリア化合物を探索します。
これらのプロジェクトは、GHIT Fundの「スクリーニングプログラム」に採択されています。

当社は今回の抗マラリア薬探索に関する共同研究など、医薬品の創出や開発途上国における医療アクセスを改善する取り組みを通じ、国連加盟国が採択した持続可能な開発目標 (SDGs) の目標3「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する」に資する活動を継続しています。

引き続き、これらの活動を通じ、当社のパーパスである世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献してまいります。

Medicines for Malaria Venture (MMV) について
MMVは、有効性が高く低価格の新規抗マラリア薬の研究、開発、および供給を通じて、マラリアの蔓延する国や地域に暮らす人々に貢献する非営利の国際的官民パートナーシップです。1999年の設立以降、MMVはファンドや大学等の研究機関、製薬企業等とのパートナーシップを通じて11の新薬を創出し、現在65以上の研究開発プロジェクトを有しています。

 

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