2020年09月18日
研究開発情報

報道関係者各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 眞鍋 淳 
(コード番号 4568 東証第1部)
問合せ先 コーポレートコミュニケーション部長 大沼 純一
TEL 03-6225-1126

欧州臨床腫瘍学会(ESMO)で発表した非小細胞肺がんにおけるU3-1402の第1相臨床試験の最新データについて

 第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、U3-1402(HER3に対する抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)のEGFR変異を有する切除不能な非小細胞肺がん患者を対象とした第1相臨床試験における安全性と有効性に関する最新データについて、欧州臨床腫瘍学会(ESMO)において発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。

 予備的安全性については、非小細胞肺がん患者において、グレード3*2以上の主な有害事象(発現率>10 %)として、血小板数減少(28%)と好中球数減少(19%)がみられました。間質性肺疾患(以下「ILD」)については、ILD外部判定委員会により3名(5%)が本剤と関連のあるILDと判定されました。

 予備的有効性については、非小細胞肺がん患者56名において、客観的奏効率*3は25%(完全奏効1名、部分奏効*4 13名)で、さらに3名の確定前の部分奏効がみられました。また、病勢コントロール率*5は70 %、奏効期間*6中央値は7ヶ月でした。

 なお、対象患者は中央値で4つの前治療歴があり、全患者がEGFRチロシンキナーゼ阻害剤の投与を受けていました(86%はオシメルチニブ投与経験あり)。その他の前治療歴は、化学療法(90%)や免疫チェックポイント阻害剤(40%)等でした。

 今回の試験結果に基づき、当社は、本剤のEGFR変異を有する切除不能な非小細胞肺がん患者を対象としたグローバル第2相臨床試験を計画しており、本剤の開発を更に推進してまいります。

以 上

*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。
*2 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。
*3 客観的奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。確定した客観的奏効率を意味します。
*4 部分奏効とは、腫瘍が 30%以上減少した状態です。確定した部分奏効を意味します。
*5病勢コントロール率とは、客観的奏効率に腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)の患者の割合を加えたものです。
*6 奏効期間とは、腫瘍の完全消失(完全奏効)または30%以上減少(部分奏効)のどちらかの基準が最初に満たされた時点から、再発または増悪が客観的に確認された最初の日までの期間です。

非小細胞肺がんについて
 肺がんは、世界中で多く見られるがんであり、がんの主要な死亡原因となっています。2018年の調査において、新規患者は世界で210万人/年、死亡数は180万人/年と推定されています。肺がんのうち80~85%は非小細胞肺がんで、そのうち、15~50%がEGFR変異を有していると推定されています。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が登場し、切除不能な非小細胞肺がんの治療は改善していますが、既存治療が適応できない患者やがんの進行が見られる患者において、新たな治療法が必要とされています。
 HER3は、異常な細胞増殖と関連する受容体であるHERファミリーのひとつであり、非小細胞肺がんの83%に発現しており、非小細胞肺がん患者のがん転移や生存率の低下に関係していると言われています。現在、非小細胞肺がんを含むがん患者を対象に承認されているHER3を標的とした治療法はありません。

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