2005年11月17日
研究開発情報

各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 庄田 隆
(コード番号 4568 東証・大証・名証各第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 高橋 利夫
(TEL:03-6225-1126)

高脂血症治療剤メバロチンを用いた大規模臨床試験 MEGA Studyについて

テキサス州ダラスで開催中のAHA(アメリカ心臓協会)年次学術集会において、メバロチン(一般名:プラバスタチンナトリウム)を用いた大規模臨床試験MEGA Studyの成績について発表がなされましたのでお知らせいたします。


本試験は、厚生労働省(当時の厚生省)の委託研究事業として1993年に開始された特別調査で、冠動脈疾患の既往のない軽度~中等度の高脂血症患者約8,000名を対象とし、心血管系疾患の一次予防効果を平均5年以上観察した日本で初めての大規模な無作為化比較試験です。具体的には、総コレステロール値220~270mg/dLの高脂血症患者に対し、食事療法単独群と食事療法+メバロチン(10~20mg/日)併用群を比較したもので、メバロチン併用群について以下の試験成績が示されました。


冠動脈疾患の発症を33%有意に抑制しました(p=0.010)。その中でも、心筋梗塞の発症を48%有意に抑制しました(p=0.03)。
冠動脈疾患に脳梗塞を加えた動脈硬化性疾患を30%有意に抑制しました(p=0.005)
総死亡を28%抑制しました(p=0.055)。
がんをはじめとした有害事象の発生については、両群間に差は認められず、これまでの数々のエビデンスと同様、メバロチンの長期服用の安全性が確認されました。

弊社の100%子会社である三共株式会社(以下三共;社長池上康弘)は、1989年にメバロチンを発売して以来、17年に亘り、高脂血症領域のリーディングカンパニーとして、さまざまな取組みを行ない、先生方、患者様に貢献して参りました。三共は、このたび、発表されたMEGA Studyもその一つであると考えております。すなわち、日本の高脂血症治療の意義が、本試験をもって、改めて明確に示されたことは、日常診療の場において、非常に価値が高いものであると考えています。


今後は、専門の先生方によって、様々な角度から詳細な評価・分析が実施されていきます。新たな知見、質の高い情報を正確にかつ速やかに医療の現場にお届けしていくことで、日本の医療に貢献し、信頼され続ける企業を目指して参ります。


以上


ご参考: 
MEGA Study:Management of Elevated Cholesterol in the Primary Prevention Group of Adult Japanese Study






報道関係各位
2005年11月17日
抗高脂血症薬市販後研究会
試験統括者:中村治雄

日本の日常診療に多くみられる高脂血症患者を対象とした 
大規模臨床試験「MEGA Study」の成績について
~日本での高脂血症治療による心血管系疾患の一次予防効果の証明~

2005年11月16日、テキサス州ダラスで開催中のAHA(アメリカ心臓協会)年次学術集会において、高脂血症治療による心血管系疾患の一次予防効果の検討を目的に日本で実施された大規模臨床試験MEGA Studyの成績について発表したので、お知らせします。


MEGA (MANAGEMENT OF ELEVATED CHOLESTEROL IN THE PRIMARY PREVENTION GROUP OF ADULT JAPANESE) Studyは、厚生労働省(当時の厚生省)の委託研究事業として1993年に始められた、高脂血症治療による心血管系疾患の一次予防を目的とする日本初の大規模な無作為化比較試験で、約8,000名の高脂血症患者(総コレステロール値220~270mg/dL)を対象に、食事療法単独または食事療法+プラバスタチン(製品名:メバロチン)併用群とに無作為割付けをし、心血管系疾患の一次予防効果を、平均5年以上観察し比較検討したものです。
 この結果、食事療法+プラバスタチン(製品名:メバロチン)併用群は、対照群(食事療法単独群)にくらべ、以下の成績が得られました。


心筋梗塞をはじめとする冠動脈疾患(CHD)の発症率が3分の2に抑制されました(抑制率33%)
CHDに脳梗塞を加えた動脈硬化性疾患が3割抑制されました(抑制率30%)
総死亡率を抑制する傾向が示されました(抑制率28%)
がん発生をはじめとした有害事象には両群間で有意差がなく、プラバスタチン(製品名:メバロチン)の長期服用の安全性が証明されました

* 防衛医科大学校名誉教授・三越厚生事業団常務理事


<本資料の内容に関するお問い合わせ先>
抗高脂血症薬市販後研究会代行
(株)トークス内MEGA Study事務局
〒102-0074東京都千代田区九段南4-8-8 日本YWCA会館5階℡03-3261-0730
医療関係者専用公式サイトhttp://www.MEGA-Study.jp/


日本の高コレステロール血症(総コレステロール値≧220mg/dL)患者は30歳代以上男性の26.3%、女性の35.1%に達し、国民の総コレステロールの平均値はこの40年間に約30mg/dL上昇したと報告されている*1。 
 日本人の死因において、心疾患、脳血管疾患は第2位、第3位であり、合計で全死因の29%を占める*2のみならず、健康寿命をも大きく損なう。高コレステロール血症はその危険因子の一つであり、生活習慣病の予防を目的とする第3次国民健康づくり運動「健康日本21」においても高脂血症の減少が目標とされ、国民の総コレステロール値を平均5mg/dL下げることで、循環器疾患による死亡数が年間2万人減少することが見込める、とした*3
 さらに、直近の調査でも、高コレステロール血症患者の割合は成人男性の25.4%、成人女性の32.1%*4にのぼっており、このような環境下においては、薬物療法を含めた有効な対策が不可欠と考えられる。



1995年に英国で発表されたWOS study*5により、高コレステロール血症へのプラバスタチン(製品名:メバロチン)投与による冠動脈疾患の一次予防効果が実証された。
 しかし、WOS studyが実施された英国などと比べ、日本のライフスタイルは異なり、冠動脈疾患の発症率が低い水準にあること、また、プラバスタチン(製品名:メバロチン)の投与量が英国にくらべ1/2~1/4と少ないことなどから、日本の日常診療に適応した独自のEvidenceを創出する必要があると判断された。
 高コレステロール血症の治療には、日本動脈硬化学会「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が参考にされているが、本ガイドラインでは、MEGA Study の対象となったような、冠動脈疾患の一次予防症例であればまずライフスタイルの改善を行い、3~6ヵ月後に管理目標に達しない場合、薬物治療を考慮する、と記載されている。
 しかしながら、高コレステロール血症の治療の意義を一部否定するような報道の影響を受け、患者のコンプライアンスが低下するなど、診療の現場には混乱がみられ、わが国における高コレステロール血症に対する薬物療法の妥当性を裏付けるEvidenceを患者、医師からも求められている。


*1 第5次循環器疾患基礎調査,2000年
*2 口動態統計,2003年
*3 健康日本21企画検討会・健康日本21計画策定検討会報告書,2000年
*4 厚生労働省「平成14年国民栄養調査」より20歳以上の数値を平均
*5 The West of Scotland Coronary Prevention Study



■デザイン: PROBE法*1に基づく多施設共同無作為化比較対照試験
冠動脈疾患の既往のない、総コレステロール値220~270mg/dLの高脂血症患者を、食事療法単独群と食事療法+プラバスタチン(製品名:メバロチン10~20mg/日)併用群とに無作為割付けをし、心血管系疾患の一次予防効果を、平均5年以上観察し、比較検討した。
■試験期間: 1994年2月~2004年3月(平均試験期間5年以上)
■対象: 冠動脈疾患の既往のない高脂血症患者7,832例
(総コレステロール値220~270mg/dL、平均243mg/dL)
■評価項目: 1次評価項目/CHD*2
2次評価項目/CHD+脳梗塞、脳卒中、すべての心血管系疾患、総死亡等

<補足>
ベースライン(下表)に示す通り、試験開始時の患者背景は両群間に差はなく、比較対照性を有する臨床試験となった。


  食事療法群
(N=3,966)
食事療法+プラバスタチン併用群
(N=3,866)
平均年齢 (歳)
58.4
58.2
女性 (人(%))
2,718 (68.5)
2,638(68.2)
BMI (kg/㎡)
23.8
23.8
平均収縮期血圧/拡張期血圧 (mmHg)
132.4/78.8
132.0/78.4
高血圧 (人(%))
1,644(42.0)
1,613(41.7)
糖尿病 (人(%))
828(20.9)
804(20.8)
現在または過去の喫煙歴 (人(%))
791(19.9)
823 (21.3)

脂質検査はSRL*3にて集中測定され、データはスポンサーより独立したCRO*4にて一元管理された。



*1 PROBE法: Prospective, Randomized, Open-labeled Blinded Endpoints
前向き,無作為化,オープン(非盲検)試験.どちらの治療法かを医師も患者も知っているが、
それを知らない第三者がエンドポイント(評価項目)の評価を行うことでバイアスを回避する臨床
試験の方法.
*2 CHD: Coronary Heart Disease.冠動脈疾患(致死性または非致死性心筋梗塞、突然死、狭心症および
冠動脈血行再建術)
*3 SRL: Special Reference Laboratory.米国疾病管理予防センター(CDC)の承認を受けた検査センター
*4 CRO: Contract Research Organization.開発業務受託機関.

試験期間中、総コレステロール(TC)、LDLコレステロール(LDL-C)、中性脂肪(TG)はいずれも対照群より低く、HDLコレステロール(HDL-C)は高く維持され、良好にコントロールされた。(各LIPIDの変化:TC値243mg/dL→214mg/dL、LDL-C値157mg/dL→128mg/dL、HDL-C値58mg/dL→60mg/dL、TG値127mg/dL→119mg/dL)
 CHDの発症率は、対照群にくらべ33%抑制された(P=0.010)。 
 このうち、心筋梗塞の発症率は、48%抑制され、ほぼ半減した(P=0.03)。


CHDに脳梗塞を加えた動脈硬化性疾患の発症率は、対照群にくらべ30%抑制された(P=0.005)。
 一方、統計学的な有意差はないものの、脳血管障害の発症率は17%(P=0.33)、総死亡率は28%(P=0.055)の抑制傾向が示された。がん発生率を含めた有害事象は、両群間に有意差は認められず、プラバスタチン(製品名:メバロチン)の長期服用の安全性が確認された。


MEGA Studyの対象者は日本の高脂血症患者のおよそ8割に該当する総コレステロール値220~270mg/dLの範囲にあり、40%が高血圧を、20%が糖尿病を合併している。また、男女比では女性の比率が高く、わが国の日常診療で一般的にみられる高脂血症患者を反映した集団となっている。
 この集団を対象に冠動脈疾患に対する強いイベント抑制効果を認めたこと、及び、がんをはじめとする有害事象の発生を増加することがないことを証明したことから、高コレステロール血症治療の意義に対する明解な解答を示す臨床的価値の高いスタディであると考える。

 

以上

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