2012年06月04日
研究開発情報

各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 中山 讓治
(コード番号 4568 東証・大証・名証各第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 石田 憲昭
TEL 報道関係者の皆様 03-6225-1126
株式市場関係者の皆様 03-6225-1125

MET阻害剤tivantinibの肝細胞癌に対する第2相臨床試験結果を米国臨床腫瘍学会で発表

・ Tivantinibの単剤治療は、MET高発現の肝細胞癌の患者において無増悪期間および全生存期間を有意に改善

・ 肝細胞癌は肝臓癌の中で最も多く見られる癌であり、世界的に増加傾向にあるi 

・ MET高発現の肝細胞癌患者を対象としたセカンドライン治療薬としての第3相臨床試験を計画中

 

 

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「第一三共」)とArQule社(本社:米国マサチューセッツ州)は、肝細胞癌に対するセカンドライン治療薬として、選択的MET阻害剤tivantinibの単剤治療における無作為化二重盲検第2相臨床試験の最終結果を発表しましたのでお知らせします。本臨床試験の結果は、第48回米国臨床腫瘍学会(American Society of Oncology: ASCO、米国、イリノイ州、シカゴ市で開催中)年次総会において発表されました(米国時間:6月2日Abstract # 4006)。

 

本臨床試験に参加した107名は切除不能な肝細胞癌を患い、ファーストライン治療後に増悪が認められた、もしくは治療が困難になった患者さんです。患者さんは、tivantinibを1日2回360mgもしくは1日2回240mgを無作為に投与されました(tivantinib群:プラセボ群=2:1)。主要評価項目は割付された患者における無増悪期間です。その他の評価項目は、割付された患者およびMET高発現または低発現(免疫染色法により同定)の患者群における、病勢コントロール率、無増悪生存期間、全生存期間、および、安全性です。

 

Tivantinib投与により、主要評価項目である無増悪期間において統計的に有意な56%の改善が認められました(ハザード比=0.64、ログランク検定p値=0.04)。MET高発現の患者群において、無増悪期間、無増悪生存期間、および、全生存期間も統計的に有意に改善されました:

・ Tivantinib投与群における全生存期間の中央値は7.2カ月であり、プラセボ群は3.8カ月でした(ハザード比=0.38、ログランク検定p値=0.01)。

・ Tivantinib投与群における無増悪期間の中央値は2.9カ月であり、プラセボ群では1.5カ月でした(ハザード比=0.43、ログランク検定p値=0.03)。

・ Tivantinib投与群における無増悪生存期間の中央値は2.4カ月であり、プラセボ群では1.5カ月でした(ハザード比=0.45、ログランク検定p値=0.02)。

 

有害事象については、tivantinib治療群において疲労感と好中球減少症や貧血といった血液関連事象が多くみられたことを除けば、プラセボと比べて同等な発現率でした。このような血液関連事象は、投与量を360mg(1日2回)から240mg(1日2回)に減量することにより減少しました。好中球減少症のため、360mg投与群における全ての患者さんの投与量は240mgに減量されました。

 

なお、第一三共とArQule社は、2008年12月、日本、中国(香港含む)、韓国、台湾を除く全世界でARQ 197の共同開発・商業化のライセンス契約を締結しております。

 

 

肝細胞癌について

全世界において肝臓癌は全ての癌の7%を占めるii6番目に多い癌であり(毎年新たに74万9千人の患者が肝臓癌であると診断される)、死亡者数では3番目に多い癌です(毎年69万2千人)。肝細胞癌は、肝臓癌の90%以上を占めますiii。慢性肝炎BおよびCは、世界的に見て肝細胞癌の主要な危険因子であり、これらのウイルスが重感染した場合には、さらに危険度が増すと認識されていますiv。肝硬変もまた、肝細胞癌の危険因子です。

 

 

TivantinibとMET について

Tivantinibは、経口投与可能な選択的MET受容体チロシンキナーゼ阻害剤です。正常な細胞においてMETは正常な細胞機能を維持していますが、癌細胞においては、制御異常が生じ継続的に活性化されています。METが異常に活性化されると、癌細胞の増殖、生存、血管新生、浸潤、転移など様々な細胞内シグナル伝達に関与することが知られております。

 

現在、tivantinibの非小細胞肺癌患者を対象とした第3相臨床試験を実施しておりますが、まだ、どの適応症でも承認されておりません。Tivantinibは、非小細胞肺癌治療においてファーストインクラスのMET阻害剤となる可能性のある化合物であり、現在、肝臓癌や大腸癌を対象に臨床試験を実施しております。

 

 

参考

 

i  Hepatocellular carcinoma: Epidemiology, risk factors and pathogenesis. World Journal of Gastroenterology 14(27): 4300-08, 2008.

ii EASL–EORTC Clinical Practice Guidelines: Management of hepatocellular carcinoma. Journal of Hepatology. 2012;56: 908-943

iii EASL–EORTC Clinical Practice Guidelines: Management of hepatocellular carcinoma. Journal of Hepatology. 2012;56: 908-943

iv Chiaramonte M, Stroffolini T, Vian A, et al.: Rate of incidence of hepatocellular carcinoma in patients with compensated viral cirrhosis. Cancer 85 (10): 2132-37, 1999.

 

 

 

 

本資料は、英語で発表したプレスリリースを日本語に翻訳し、再編集したものです。本資料の正式言語は英語であり、内容および解釈については英語が優先することをご了承ください。本資料の原文(英語版)はhttps://www.daiichisankyo.com/でご確認いただくことができます。

以上

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