2013年03月16日
研究開発情報

各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 中山 讓治
(コード番号 4568 東証・大証・名証各第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 石田 憲昭
TEL 報道関係者の皆様 03-6225-1126
株式市場関係者の皆様 03-6225-1125

抗血小板剤「プラスグレル」の国内第3相臨床試験(PRASFIT-ACS)結果について

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、日本において実施した経皮的冠動脈形成術(以下「PCI」(*1))を受ける急性冠症候 群(以下「ACS」(*2))患者を対象とした抗血小板剤プラスグレル塩酸塩(以下「プラスグレル」)の第3相臨床試験(PRASFIT-ACS試験) (*3)の結果が第77回日本循環器学会学術集会にて報告されましたので(3月16日(土)、14:40-16:10、Late Breaking Clinical Trials 1, Abstract No.1)、その概要をお知らせします。

 

本試験の主要評価項目である、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の発現率は、プラスグレルで9.4%、クロピドグレル硫酸塩(以下 「クロピドグレル」)で11.8%(リスク低下率=23%)でした。また、本試験における冠動脈バイパス術治療に関連しない大出血は、プラスグレル投与群 とクロピドグレル投与群のいずれにおいても少数で、両群で差は認められませんでした(プラスグレル投与群およびクロピドグレル投与群の発現率はそれぞれ 1.9%と2.2%)。大出血、小出血および臨床的に重要な出血についても、プラスグレル投与群とクロピドグレル投与群で差は認められませんでした。

 

PRASFIT-ACS試験の医学専門家で、湘南鎌倉総合病院 副院長、循環器科部長の齋藤 滋先生は、次のように述べています。 「PRASFIT-ACS試験は、ACS-PCI患者を対象に本邦で行われた最も大規模な第3相比較試験です。本試験では日本の診療ガイドラインを十分に 考慮し、かつプラスグレルの用量を日本人を対象に実施した第2相臨床試験の結果[i]に 基づいて選択しました。その結果、プラスグレル群の心血管イベント発現率が9.4%、クロピドグレル群で11.8%であり、リスク低下率が23%を示し、 かつ両群間の出血傾向に差が見られなかったたことは、PCIにおける薬物治療の観点で臨床上大きな意義があると思います。このPRASFIT-ACS試験 の結果は海外で実施されたTRITON試験の結果と効果の面で一貫性を示していることから、プラスグレルが日本のACS-PCI患者の標準治療薬になると 期待しています。」

また、当社のグローバル研究開発責任者であり、専務執行役員のグレン ゴームリー博士は、「我々は、PRASFIT-ACS試験を通じ、プラスグレルが臨床上問題となる出血を増加させることなく、日本のACS-PCI患者さ んの心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中のリスクの低下傾向を示すことができたことを大変喜ばしく思っております。本臨床試験を遂行してく ださった治験医師の方々の強力なリーダーシップに心から感謝の意を表します。我々は日本の患者さんへ新たな選択肢を提供するとともに、今後もプラスグレル の医療貢献につながる新たな価値を創造していきたいと考えております。」と、述べています。 

 

PRASFIT-ACS試験に加え、日本国内においてプラスグレルは待機的PCI施行患者を対象とした心臓領域での第3相臨床試験(PRASFIT-Elective試験)をすでに終了し、所期の目的を達成する成績を得ております。

当社は、PRASFIT-ACS試験およびPRASFIT-Elective試験の臨床試験結果を踏まえ、2013年度上半期に製造販売承認申請を行うべく、推進してまいります。

さらに、日本国内ではプラスグレルによる虚血性脳血管障害患者を対象とした第3相臨床試験も実施しており、2014年度に終了予定です。

 

 

 

本試験の概要について

PRASFIT-ACS試験は、日本で実施された、多施設、無作為、二重盲検法、2群並行、第3相臨床試験であり、経皮的冠動脈形成術(PCI)を 施行される急性冠症候群(ACS)患者1,363名を対象とし、アスピリン併用時のプラスグレルを24~48週間投与したときの有効性および安全性につい て、クロピドグレルと直接比較した試験です。患者をプラスグレル投与群(685名)かクロピドグレル投与群(678名)に無作為に割り付け、PCIにあた り初期投与量として20mgのプラスグレル、もしくは承認用量である300mgのクロピドグレルを投与しました。その後、維持投与量としてプラスグレル 3.75mg、もしくはクロピドグレル75mgを投与しました。

主要評価項目は、投与開始後24週時点における心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の発現であり、本試験はプラスグレル群におけるこ れら全体の発現率がクロピドグレル群よりも低値となることを確認することが目的でした。安全性評価項目は、主に冠動脈バイパス術治療に関連しない大出血、 小出血、および、臨床的に重要な出血でした。

 

 

プラスグレルについて 

プラスグレルは、第一三共と宇部興産株式会社が創製した経口抗血小板剤であり、血小板の凝集を抑制することにより、動脈の狭窄・閉塞を防ぎます。

プラスグレルは、日本国内では第一三共と宇部興産が共同開発しており、第3相の段階にあります。海外では、第一三共とイーライ  リリー・アンド・カンパニーによる共同開発のもと、2009年欧州委員会がPCIを施行した急性冠症候群患者のアテローム血栓性イベント抑制を適応として 本薬剤を承認して以来、世界70ヶ国以上で承認されております。

 

 

急性冠症候群について

急性冠症候群とは、心筋梗塞や不安定狭心症のことです。心筋梗塞は、冠動脈疾患の重篤な病態であり、血管壁に蓄積したコレステロールや脂肪によって 動脈が狭窄または閉塞することで発症します。その中には血管壁の粥腫(プラーク)が破裂することで血栓が生じ、部分的にあるいは完全に心臓への血液の供給 を妨げることもあり、その際にACSを発症します[ii]。

平成23年の死因別死亡総数のうち、心疾患(高血圧性を除く)は悪性新生物(がん)に続く第2位で19万4,926人(15.6%)を占めます。ま た。このうち、急性心筋梗塞が4万3,265人で心疾患全体の22.2%、「その他の虚血性疾患」が3万4,576人で17.7%でした[iii]。

 

 

*1 PCI: Percutaneous Coronary Intervention

*2 ACS:Acute Coronary Syndrome

*3 PRASFIT-ACS試験:

    “PRASugrel Compared to Clopidogrel For Japanese PatIenTs with ACS Undergoing PCI”試験

 

 


[i] Takaaki Isshiki et al., Cardiovascular Intervention and Therapeutics, CVIT 2011.

[ii] WebMD Medical Reference in Collaboration with the Cleveland Clinic. Heart Disease: Coronary Artery Disease. Available at: www.webmd.com/heart-disease/guide/heart-disease-coronary-artery-disease. Accessed May 2012.

[iii]厚生労働省発表の「平成23年(2011)人口動態統計(確定数)の概況」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei11/

以上

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