2014年03月24日
研究開発情報

各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 中山 讓治
(コード番号 4568 東証第1部)
問合せ先 執行役員コーポレートコミュニケーション部長 石田 憲昭
TEL 報道関係者の皆様 03-6225-1126
株式市場関係者の皆様 03-6225-1125

抗血小板剤「プラスグレル」の国内第3相臨床試験(PRASFIT-ACS試験)における サブグループ解析結果の概要について

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、当社が創製した抗血小板剤プラスグレル塩酸塩(以下「プラスグレル」)の国内第3相臨床試験(PRASFIT-ACS試験(*1))における有効性と血小板凝集能に関するサブグループ解析の結果が、3月22日に第78回日本循環器学会学術会にて報告されましたので、その概要をお知らせします。

 

PRASFIT-ACS試験に参加した全患者(1,363名)の経皮的冠動脈形成術(PCI(*2))後3日間における主要心血管イベント(MACE) (*3) (心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中)の発現率は、プラスグレル群で5.3%、クロピドグレル群で8.3%であり、プラスグレル群で統計学的に有意な低下が認められました(リスク低下率=37%, HR 0.63, 95% CI 0.41-0.95, p=0.026)。

 

PRASFIT-ACS試験に参加した全患者のうち、本サブグループ解析の対象となったのは、初回負荷投与後5-12時間のPRU(*4)を測定した660名でした。本サブグループ解析では、PRASFIT-ACS試験のPCI後3日間におけるMACEの発現率と初回負荷投与後5-12時間における血小板凝集能の指標であるPRUとの関係について評価した結果、MACEの発現率と血小板凝集能に相関が認められ、PCI後早期のMACEを低減させるためには、初回負荷投与後、早期に血小板凝集能を低下させる必要があることが示唆されました。

 

PRASFIT-ACS試験の概要について

PRASFIT-ACS試験は、日本で実施された、多施設、無作為、二重盲検法、2群並行、第3相臨床試験であり、PCIを施行される急性冠症候群(ACS)(*5)患者1,363名を対象とし、アスピリン併用時のプラスグレルを24~48週間投与したときの有効性および安全性について、クロピドグレル硫酸塩(以下「クロピドグレル」)と直接比較した試験です。患者をプラスグレル投与群(685名)またはクロピドグレル投与群(678名)に無作為に割り付け、PCIにあたり初回負荷投与量として20mgのプラスグレル、もしくは承認用量である300mgのクロピドグレルを投与しました。その後、維持用量としてプラスグレル3.75mg、もしくはクロピドグレル75mgを投与しました。

本試験の主要評価項目である、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性虚血性脳卒中の発現率は、プラスグレルで9.4%、クロピドグレルで11.8%(リスク低下率=23%, HR 0.77, 95% CI 0.56-1.07, p=0.12)でした。また、本試験における冠動脈バイパス術治療に関連しない大出血は、プラスグレル投与群とクロピドグレル投与群のいずれにおいても少数で、両群で差は認められませんでした(プラスグレル投与群およびクロピドグレル投与群の発現率はそれぞれ1.9%と2.2%)。大出血、小出血および臨床的に重要な出血についても、プラスグレル投与群とクロピドグレル投与群で差は認められませんでした。

本試験の結果は、第77回日本循環器学会学術集会にて報告されました。

 

サブグループ解析の結果の概要について

初回負荷投与後5-12時間のPRUとPCI後3日間におけるMACEとの関係を評価したところ、MACEを予測するPRUに関するカットオフ値(*6)(PRU値=262)が算出されました。PRUがカットオフ値以下の群におけるMACEの発現率は5.2%、PRUがカットオフ値以上の群におけるMACEの発現率は10.8%でした(オッズ比 0.50, 95% CI 0.25-0.99, p<0.01)。さらに、カットオフ値以下に到達した患者の割合は、プラスグレル群で79.9%、クロピドグレル群で30.4%でした(p<0.0001)。

 

プラスグレルについて

プラスグレルは、第一三共と宇部興産株式会社が創製した国産の経口抗血小板剤であり、速やかに血小板の凝集を抑制することにより、早期より優れた心血管イベント抑制作用を示します。

日本国内では第一三共と宇部興産が共同開発しており、現在、虚血性脳血管障害患者を対象とした第3相臨床試験を実施しています。海外では、2009年欧州委員会がPCIを施行した急性冠症候群患者のアテローム血栓性イベント抑制を適応として本薬剤を承認して以来、世界70ヶ国以上で承認されております。

 

急性冠症候群 (ACS) について

急性冠症候群とは、心筋梗塞や不安定狭心症のことです。心筋梗塞は、冠動脈疾患の重篤な病態であり、血管壁に蓄積したコレステロールや脂肪によって動脈が狭窄または閉塞することで発症します。その中には血管壁の粥腫(プラーク)が破裂することで血栓が生じ、部分的にあるいは完全に心臓への血液の供給を妨げることもあり、その際にACSを発症します(*7)。

 平成24年の死因別死亡総数のうち、心疾患(高血圧性を除く)は悪性新生物(がん)に続く第2位で19万8,836人(15.8%)を占めます。また。このうち、急性心筋梗塞が4万2,107人で、「その他の虚血性疾患」が3万5,472人でした(*8)。

 

*1 PRASFIT-ACS試験:

 “PRASugrel Compared to Clopidogrel For Japanese PatIenTs with ACS Undergoing PCI”試験

*2  PCI: Percutaneous Coronary Intervention

*3 MACE:Major Adverse Cardiovascular Events

*4 PRU: P2Y12 Reaction Units 血小板活性化の指標であるPRUをVerifyNow®システムを用いて測定しました。

*5 ACS:Acute Coronary Syndrome

*6 カットオフ値:分割点とも呼ばれています。今回の結果では、血小板凝集能の指標であるPRUと3日間における主要心血管イベント(MACE)に関して、解析を行い262という値を算出しました。3日間におけるMACEは、PRU値が262以下になると減少すると予測されました。

*7  WebMD Medical Reference in Collaboration with the Cleveland Clinic. Heart Disease: Coronary Artery Disease. Available at: http://www.webmd.com/heart-disease/guide/heart-disease-coronary-artery-disease. Accessed June 2013.

*8  厚生労働省発表の「平成24年(2012)人口動態統計(確定数)の概況」http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei12/

 

以 上

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