第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、DS-8201(HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)*1)の第1相臨床試験(以下「本試験」)における、HER2陽性及びHER2低発現の乳がん患者を対象とした安全性と有効性に関する最新データについて、米国テキサス州サンアントニオで開催中のサンアトニオ乳がんシンポジウムで発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。
本試験のHER2陽性及びHER2低発現の乳がん患者を対象とした安全性については、グレード3*2の有害事象として、好中球数減少(10.4%)、白血球数減少(10.4%)等がみられました。グレード4*2の有害事象として、好中球数減少(4.3%)、血小板数減少(2.6%)、貧血(0.9%)がみられました。またグレード5*2の有害事象として、肺臓炎の可能性のある2症例が報告され、評価委員会にて精査される予定です。
本試験のHER2陽性の再発・転移性乳がん患者を対象とした有効性については、T-DM1(トラスツズマブにエムタンシンを結合させたADC)による前治療を受けた患者57名において、全奏効率*3は61.4%、病勢コントロール率*4は94.7%でした。また、本試験のHER2低発現の乳がん患者を対象とした有効性については、前治療を受けた患者19名において全奏効率は31.6%、病勢コントロール率は84.2%でした。
DS-8201は、現在、HER2陽性の再発・転移性乳がんを対象とした第2相臨床試験を実施中ですが、本試験の最新データより、HER2陽性乳がんに加えHER2低発現乳がんにおいてもその有用性が示唆されたことから、今後、HER2低発現乳がんを対象とした開発の次ステップについても検討してまいります。
以 上
*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬群で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めた薬剤です。
*2 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。
*3 全奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。確定した全奏効率を意味します。
*4 病勢コントロール率とは、全奏効率に、腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)の患者の割合を加えたものです。
第一三共のがん事業について
当社のがん事業は、世界最先端のサイエンス(科学的知見、技術)を応用し、がん患者さんのための革新的な治療を提供することを使命としています。
当社は、日本のがん領域ラボラトリー(バイオ・がん免疫・低分子)と米国プレキシコン(低分子)の強力な研究体制を通じて、がん領域の開発パイプラインの拡充を進めており、抗体薬物複合体(ADC)と急性骨髄性白血病(AML)をフランチャイズとして、合計20以上の新規の低分子医薬、抗体医薬および抗体薬物複合体(ADC)を保有しています。
主要開発品目には、FLT3-ITD阻害剤キザルチニブ(目標適応:急性骨髄性白血病)、抗HER2抗体薬物複合体DS-8201(目標適応:固形がん)、CSF-1R阻害剤ペキシダルチニブ(目標適応:腱滑膜巨細胞腫、固形がんにおける抗PD-1抗体との併用試験も実施中)等があります。