2019年12月10日
研究開発情報

報道関係者各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 眞鍋 淳 
(コード番号 4568 東証第1部)
問合せ先 コーポレートコミュニケーション部長 大沼 純一
TEL 03-6225-1126

バレメトスタット(DS-3201)の成人T細胞白血病・リンパ腫患者を対象とした 第2相臨床試験開始について

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、再発または難治性の成人T細胞白血病・リンパ腫(以下「ATL」)患者を対象としたバレメトスタット(DS-3201:EZH1/2阻害剤、以下「本剤」)の国内第2相臨床試験(以下「本試験」)において、最初の患者への投与を開始しましたので、お知らせいたします。

ATLは極めて侵攻性の強い非ホジキンリンパ腫*1の一種で、日本を含む特定の地域に多く見られる希少疾患です。ATLに対する主な治療法は多剤併用化学療法で、特に再発の場合は予後が極めて不良です。

EZH1及びEZH2は、多くの血液がんで発現しているヒストンメチル化酵素で、がん抑制遺伝子の不活性化に関係していることが示されています。現在、EZH1及びEZH2を選択的に阻害する臨床開発中の薬剤は本剤しか無く、ファーストインクラスの薬剤となる可能性があります。

本試験は、再発または難治性のATL患者を対象とした国内第2相臨床試験で、単剤療法として本剤の有効性および安全性を評価します。主要評価項目は全奏効率*2で、約25名の患者を登録する予定です。本試験はATLを含む非ホジキンリンパ腫を対象として進行中の第1相臨床試験の予備的知見に基づき開始されました。なお、第1相臨床試験の概要は2019年米国血液学会(ASH)年次総会で発表されました。

再発または難治性のATLに対する有効な治療法は十分ではなく、当社は、患者さんに新しい治療の選択肢を提供できることを期待しております。

以 上

*1 非ホジキンリンパ腫は、リンパ球に由来する悪性リンパ腫の一つで、B細胞リンパ腫とT細胞リンパ腫に大別されます。

*2 全奏効率とは、完全寛解及び部分寛解の患者の割合です。完全寛解とは、すべての病変(リンパ節の腫大など)が消失した状態です。部分寛解とは、すべての病変が縮小し、かつ新病変がない状態です。

成人T細胞白血病・リンパ腫患者について
ATLは、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染が原因で発症する疾患で、日本に多い悪性リンパ腫の一種です。日本には、HTLV-1のキャリアが約100万人おり、そのうち5%が生涯のうちにATLを発症し、年間の新規患者は600~700人程度、年間の死亡者数は約1,000人と推定されています。 ATLの発症予防法や有効な治療法は十分ではなく、予後不良な疾患です。日本は先進国における唯一のHTLV-1の多い国であり、国際的にもATLの有効な治療法の確立と発症予防につながる新たな治療法の開発を先導することが期待されています。

バレメトスタット(DS-3201)について
本剤は、エピジェネティクス(DNA配列の変化を伴わない遺伝子発現変化を誘導する分子メカニズム)領域の低分子医薬品で、EZH1及びEZH2を選択的に阻害します。EZH1及びEZH2は、多くの血液がんで発現しているヒストンメチル化酵素で、がん抑制遺伝子の不活性化に関係していることが示されています。本剤については、本試験に加え、ATL、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)及びB細胞性リンパ腫を含む非ホジキンリンパ腫を対象とした第1相臨床試験を実施中、また急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)などの血液がんを対象とした第1相臨床試験を実施中です。本剤は、再発または難治性のPTCLの治療を対象として厚生労働省から「先駆け審査指定制度」の対象品目に指定されています。

第一三共のがん事業について
当社のがん事業は、世界最先端のサイエンス(科学的知見、技術)を応用し、がん患者さんのための革新的な治療を提供することを使命としています。
当社は、日本のがん領域ラボラトリー(バイオ・がん免疫・低分子)と米国プレキシコン(低分子)の強力な研究体制を通じて、がん領域の開発パイプラインの拡充を進めており、抗体薬物複合体(ADC)フランチャイズ、急性骨髄性白血病(AML)フランチャイズおよびブレークスルー・サイエンスを3つの柱として、2025年までの8年間に7つの革新的新薬の上市を目指します。

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