2020年06月01日
研究開発情報

報道関係者各位

会社名 第一三共株式会社
代表者 代表取締役社長 眞鍋 淳 
(コード番号 4568 東証第1部)
問合せ先 コーポレートコミュニケーション部長 大沼 純一
TEL  03-6225-1126

米国臨床腫瘍学会(ASCO)で発表したHER2陽性の胃がんにおける トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)の第2相臨床試験データについて

第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)とアストラゼネカ(本社:英国ケンリッジ)は、トラスツズマブ デルクステカン(DS-8201、HER2に対する抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)の日韓第2相臨床試験(DESTINY-Gastric01)におけるHER2陽性の進行・再発胃腺がんまたは胃食道接合部腺がん患者を対象としたデータについて、ASCO 2020において発表しましたので、その概要についてお知らせいたします。また、本試験結果は医学雑誌「The New England Journal of Medicine」のオンライン版に掲載されました。

有効性については、確定した客観的奏効率*2は本剤単独投与群(119名)42.9%に対し、治験医師選択薬投与群(56名)12.5%と、本剤単独投与群は統計学的に有意かつ臨床的意義の高い改善を示しました。また、副次評価項目として、本剤単独投与群(125名)は治験医師選択薬投与群(62名)と比較し、死亡リスクを41%有意に減少させました。詳細については、下表の通りです。

 

有効性指標

本剤単独投与群

治験医師選択薬投与群

 

n=119

n=56

確定した客観的奏効率*2 (%)

42.90%

12.50%

     完全奏効 (%)

8.40%

0%

     部分奏効 (%)

34.50%

12.50%

確定した病勢コントロール率*3 (%)

85.70%

62.50%

確定した奏効期間*4中央値 (ヶ月)

11.3ヶ月

3.9ヶ月

 

n=125

n=62

全生存期間*5中央値 (ヶ月)

12.5ヶ月

8.4ヶ月

1年生存率 (ヶ月)

52.10%

28.90%

 

安全性については、過去の臨床試験と同様の傾向が認められました。対象患者125名において、グレード*63以上の有害事象として、好中球数減少(51.2%)、貧血(37.6%)、白血球数減少(20.8%)、食欲減退(16.8%)等がみられました。
 間質性肺疾患(以下「ILD」)については、ILD外部判定委員会により9.6%(12名) が本剤と関連のあるILDと判定され、多くはグレード1または2であり、グレード3が2名、グレード4が1名でした。

当社とアストラゼネカは、胃がん患者さんへ本剤を一日でも早く提供できることを期待しております。

以 上

*1抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。

*2 客観的奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。

*3 病勢コントロール率とは、客観的奏効率に腫瘍が安定している状態(腫瘍が30%未満減少~20%未満増加)の患者の割合を加えたものです。

*4 奏効期間とは、腫瘍の完全消失(完全奏効)または30%以上減少(部分奏効)のどちらかの基準が最初に満たされた時点から、再発または増悪が客観的に確認された最初の日までの期間です。

*5 全生存期間とは、原因を問わず死亡までの期間です。

*6 米国国立がん研究所(NCI)の有害事象共通用語規準(CTCAE)で規定された重症度を意味し、グレード1~5に分類されます。

胃がんについて
 胃がんは、世界で5番目に多いがん種であり、がん種別死亡数は第3位です。2018年の調査において、世界の新規患者は約100万人/年、死亡数は約80万人/年でした。胃がんの約5分の1はHER2陽性であり、通常、進行した段階で診断されますが、病気の初期段階で診断された場合でも生存率はわずかです。トラスツズマブ投与後に進行したHER2陽性の進行・再発胃がん患者に対して、HER2を標的とした治療薬はありません。

アストラゼネカとの提携について
 当社とアストラゼネカは、2019年3月に全世界(当社が独占的権利を有する日本は除く)においてトラスツズマブ デルクステカン(DS-8201)を共同で開発及び商業化する契約を締結しました。なお、当社は本剤の製造及び供給に責任を持ちます。

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