第一三共株式会社(本社:東京都中央区、以下「当社」)は、U3-1402(HER3に対する抗体薬物複合体(ADC)*1、以下「本剤」)とタグリッソ(一般名:オシメルチニブ、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤)との併用療法を評価する臨床試験の実施に関する契約をアストラゼネカ(本社:英国ケンブリッジ)と締結しましたので、お知らせいたします。
本契約に基づき、当社は、EGFR遺伝子変異を有する進行・転移性の非小細胞肺がん患者を対象とした、両剤併用のグローバル第1相臨床試験を実施します。
本試験は2つのパートからなり、パート1(用量漸増パート)では、本剤とタグリッソの異なる投与量の組み合わせによる安全性と忍容性を評価し、推奨用量を決定します。パート2(用量展開パート)では、両剤併用の推奨用量での有効性と安全性を評価します。
用量漸増パートの主要評価項目は安全性と忍容性で、用量展開パートの主要評価項目は客観的奏効率*2等です。北米、欧州、日本を含むアジアにおいて最大258名の患者を登録する予定です。
当社は、本剤と標的の異なる他剤との併用療法により、本剤の価値を最大化し、がん患者さんのアンメット・メディカル・ニーズの充足に取り組んでまいります。
以 上
*1 抗体薬物複合体(ADC)とは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めています。
*2 客観的奏効率とは、腫瘍が完全に消失または30%以上減少した患者の割合です。
非小細胞肺がんについて
肺がんは、世界中で多く見られるがんであり、がんの主要な死亡原因となっています。2018年の調査において、新規患者は世界で210万人/年、死亡数は180万人/年と推定されています。肺がんのうち80~85%は非小細胞肺がんで、このうちEGFR遺伝子変異を有する患者の割合は約14~30%程度との報告があります。分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が登場し、進行性・転移性の非小細胞肺がんの治療は改善していますが、既存治療が適応できない患者やがんの進行が見られる患者において、新たな治療法が必要とされています。
HER3は、正常および異常な細胞増殖と関連する受容体であるHERファミリーのひとつであり、非小細胞肺がん患者の75%に発現しており、がん転移の増加や生存率の低下に関係していると言われています。EGFR 遺伝子変異を有する非小細胞肺がん患者の大多数において、ある程度のHER3 が発現しています。現在、非小細胞肺がんを含むがん患者を対象に承認されているHER3を標的とした治療法はありません。