患者への想いをかたちに。それぞれのPatient Centricityを活かして。
「社員の自発的な活動がうれしい」と語る上野さん
患者への想いをかたちに。それぞれのPatient Centricityを活かして。
第一三共にとって重要なPatient Centricityという価値観には、共通の定義はない。だからこそ、社員一人ひとりの心の中で育ち、さまざまなかたちとなって表れている。
「例えば、COMPASSという取り組みがあります」と上野さんは語る。
Compassion for Patients Strategyの略で、「患者志向の創薬」実現を推進する第一三共独自の取り組みだ。患者が求める医薬品を創出するための羅針盤(Compass)という意味が込められている。
Patient Centricityが重要といっても、製薬会社が直接患者と接する機会は限られている。
しかし、「患者さんのニーズや、真に患者さんから求められる薬は、科学論文だけではわからない。真に求められる薬を創製するためには、患者さんの声を聴く必要がある」というジレンマが、第一三共の有志を突き動かし、草の根的にCOMPASSという取り組みが始まった。
2014年に研究開発本部内の活動としてスタートし、現在は研究開発本部以外の社員も含め、15名のメンバーで運営している。運営メンバーでアイデアを出し合って、さまざまな活動を企画してきた。
今では患者による講演会の開催、他の製薬会社と共同での患者との対話イベント「Healthcare Café」の実施、活動報告や社員の闘病記などを第一三共の日本国内全社員へ共有する「COMPASSニュース」の発行など、活動の幅を広げている。イベントには社員が自由に参加できるようになっているという。
「患者さんの声を聴き、求められる薬や、飲みやすい、使いやすい薬を考え、創り、お届けすることはとても重要なことですから、COMPASSが草の根的に研究開発本部から始まったことは意味のあることです。社内でCOMPASSの知名度がどんどん上がり、興味を持って参加する社員が増えています」(上野さん)
患者の声を創薬に活かそうと活動をするCOMPASS。
一方で、薬の安全性に関わる安全管理本部では、本部の役割がPatient Centricityそのものだと捉えている。
その役割は、患者への適切な安全性情報の提供や、医薬品の正しい使用の推進によって、患者の安全を最大限確保し、医薬品のベネフィット・リスク(有効性・安全性)を最大化することにある。
「薬は有効性だけでなく、安全性も非常に大事です」と上野さんは語る。
薬は正しく使用されることでその本来の力を発揮できるのだ。
「安全管理本部は、安全面から患者さんのことを考え、わかりやすく安全性情報を伝える活動を、本部の役割として継続して行ってきました。2019年にWHO(世界保健機関)が9月17日をWorld Patient Safety Day(世界患者安全の日)と制定したことを機に、Patient Safety(患者安全)を担う部門である安全管理本部が、World Patient Safety Dayのテーマカラーであるオレンジ色のアイテムを身に着けて啓発活動を行ってきました。海外も含めた第一三共全体でPatient Safetyについてもっと考えていこうと、2024年に第一三共の各国の拠点でCSPV(Clinical Safety & Pharmacovigilance)フォーラムを開催しました」
*CSPV:開発段階から市販後までの製品ライフサイクルを通じて、安全性情報のモニタリングとリスクマネジメントを担う機能のこと。
このフォーラムは、リスクマネジメントに関する具体事例の共有や、さまざまな部門とのパネルディスカッションが主体の社内イベント。フォーラムで安全管理本部の活動を社内に広め、安全性のリスク最小化への意識を全社で高めることが目的だ。安全管理本部には、それによって各部所での活動や連携を強化し、患者に安心して薬を使用してもらえるようになりたい、そんな想いがあったという。
安全管理本部のこうした想いで開催されたCSPVフォーラムもPatient Centricityがかたちとして表れたものの1つで、「Patient Centricityがかたちとなって表れたものは、このほかにもたくさんあり挙げきれません。社員一人ひとりがまじめに患者さんと向き合い、頑張っています」と上野さんは語る。
さまざまな部所の社員が、それぞれの立場で考え、日々Patient Centricityを実践している。