社外取締役座談会

第一三共グループのパーパス実現に向け、
持続的成長を目指した議論を充実させ、
監督機能をしっかりと果たしていく

当社グループがパーパス実現に向けて持続的に成長していくために、取締役会としての監督機能をどのように
果たしていくのかについて、社外取締役の皆さんより、多様なご意見をいただきました。

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社外取締役(独立役員)
釡 和明
総合重工業メーカーにおける会社経営者としての経験から、企業経営全般及び財務・会計に関する豊富な経験、幅広い知識を有する。2019年6月当社社外取締役に就任。また、2019年6月~2022年6月報酬委員会委員長に就任し、2022年6月指名委員会委員長に就任。

社外取締役(独立役員)
宇治 則孝
情報通信分野における会社経営者としての経験から、企業経営全般及びIT・デジタルテクノロジーに関する豊富な経験、幅広い知識を有する。2014年6月当社社外取締役に就任。また、2020年6月より、当社において初めて社外取締役として取締役会議長に就任。

社外取締役(独立役員)
野原 佐和子
インターネット及びデジタルビジネスに関する会社創業者、経営者としての経験から、企業経営全般、IT・事業戦略・マーケティング等に関する豊富な経験、幅広い知識を有する。2019年6月当社社外取締役に就任。また、2022年6月報酬委員会委員長に就任。

社外取締役(独立役員)
小松 康宏
医学者としての経験から、医療全般、クリニカル・ガバナンス、公衆衛生、医薬品安全及びリスクマネジメント等に関する豊富な経験、幅広い知識を有する。2022年6月当社社外取締役に就任。

社外取締役(独立役員)宇治 則孝 写真

激動する社会の変化に対応し、ESG経営を
進めることで、当社の企業価値や社会的価値が
向上できるよう、取締役会としても
取り組んでいきたいと考えております。

社外取締役(独立役員)
宇治 則孝

取締役会での議論や雰囲気をお聞かせください。

宇治
ひとことで言えば、当社の取締役会は、とても自由闊達な議論がなされております。私は、2020年より当社において初めて社外取締役として取締役会議長を務めておりますが、議長という立場は取締役会が活性化するために重要な役割であると考えております。私自身が眞鍋CEOや奥澤CFOと日常的にコミュニケーションをとると共に、経営会議にもオブザーバーとして参加しております。取締役会事務局からメンバーへの事前説明等もあり、取締役会において、執行と監督の分離という視点も意識しつつ、かなり質の高いレベルで議論することができております。

野原
眞鍋CEOと宇治議長の強い本気度と覚悟のもと、取締役会において大変良い議論がなされております。議論をその場限りとせず、意見や提案を執行側がしっかりと咀嚼して再検討し、取締役会へフィードバックしております。また、宇治議長が社外の視点をもち、執行側と議論した上で、適切な議題が選定されております。社外役員が経営会議にオンラインでオブザーバー参加できる仕組みや、エンハーツ®の製造施設や研究施設等の視察の機会があることも、執行側や現場の実態を踏まえた議論の質の向上に貢献しております。


宇治取締役が議長を務めることで、社内外取締役がより活発に議論することができております。従来以上に、中長期の経営戦略、リスクマネジメント、コンプライアンス等の議題が増え、重要な意思決定に関して議論することができていると評価しております。

2021年度は、毎年度実施している取締役会評価について、初めて第三者機関による評価を実施されました。第三者評価の結果と今後の課題についてお聞かせください。

宇治
取締役会メンバーへのアンケートと詳細なインタビューを通じた分析により、全体として取締役会の実効性が良好に確保されており、日本企業の中でも高い水準であるとの良い評価をいただきました。体制面では、取締役会議長、指名委員会委員長及び報酬委員会委員長が社外取締役であること、女性役員が3名選任されていること、内容面では、運営方法、議題選定、議論の内容についてポジティブなフィードバックをいただきました。ただし、グローバルの観点ではさらに経営環境が変化していく中で改善すべき点があると考えております。

指名委員会と報酬委員会についてそれぞれの委員会の役割や課題についてお聞かせいただけますでしょうか。


2022年6月より指名委員会委員長を拝命しました。これまで指名委員会において、取締役候補者選定、役員人材要件定義、スキルマトリックス等、幅広い議題について議論してきました。CEO後継者計画、取締役会構成、事業戦略等に基づき求められるスキルを有する取締役候補者の選定等を今年度の課題として捉えるとともに、グローバルでの事業展開を踏まえ、幅広い観点での取締役の登用、執行役員の年齢やバックグラウンドの多様性についても論点であると考えております。また、委員会活動の可視化と、機動的な取締役会報告をさらに進めることも検討課題として認識しております。

野原
2022年6月より報酬委員会委員長を務めます。当社の指名委員会及び報酬委員会の素晴らしい点は、両委員会において委員である社外取締役がしっかり議論し、結論を導き出していることです。両委員会にそれぞれ別の社外監査役がオブザーバーとして参加しており、客観性を担保した委員会運営ができていることもユニークな点です。また、報酬委員会においては、およそ2年をかけて、新たな役員報酬制度の導入、報酬構成割合、報酬水準等について議論し、2021年に役員報酬制度を改定しました。現在、改定後の役員報酬制度に基づき運用が行われており、今年度の委員会では、年次業績連動賞与の評価結果の確認とともに、設定した中計業績連動株式報酬の非財務指標等についても見直しが必要か議論していきたいと考えております。

社外取締役(独立役員)野原 佐和子

グローバル体制の充実、
DX推進及びイノベーション、ダイバーシティ、
なかでも女性の活躍・登用推進について、
しっかり議論していきたいと考えております。

社外取締役(独立役員)
野原 佐和子

コーポレートガバナンス全体に関する課題感についてお聞かせください。

宇治
取締役会評価の結果を踏まえ、取締役会が取り組む重点施策が3点あります。1点目は、取締役会の監督機能のさらなる強化に向けた重点テーマへの取り組みです。DXやESGを含む長期戦略や、当社が向かうグローバル化について、より重点的に議論する場を持つことが重要です。2点目は、取締役会以外にも、取締役・監査役による意見交換会、社外役員のみの会合等のコミュニケーションの機会を設けることです。3点目は取締役会構成の最適化に向けた検討です。現在もスキルマトリックスにおける必要なスキルを備えた体制になっておりますが、変化する経営環境のもとでどのような構成が良いか、改めて議論したいと考えております。


取締役会の長期戦略に関する意思決定機能のさらなる強化に向けて、当社がグローバルヘルスケアカンパニーとなる前提としてのグローバル組織や人事制度等の課題についても、取締役会及び指名委員会において議論していきたいと考えております。

野原
取締役会メンバーとして、グローバル体制の充実、DX推進及びイノベーション、ダイバーシティ、なかでも女性の活躍・登用推進について、しっかり議論していきたいと考えております。

サステナビリティに関する議題やESG経営について、取締役会でどういった議論が行われているかをお聞かせください。

宇治
当社グループのパーパスは「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」ことであり、2030年ビジョンの検討に際しては、社外役員も議論に加わり、「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」を策定しました。取締役会においては、8つのマテリアリティとそれぞれ設定したKPIの進捗状況や社会の動きに合わせて変更すべきところはないか議論しており、執行側で苦労しているところがあればアドバイスも行っております。一つの事例として、女性活躍推進のKPIについて、厳しい状況の中、社外役員からの意見も取り入れて目標を設定し、議論を深めております。


取締役会における議論を通じて、パーパスが最上位にあり、ミッション、2030年ビジョン、当社グループ共通の価値観であるコア・バリューが続く、経営理念体系が明確になったのが一つの大きな成果であったと考えております。事業ポートフォリオ・マネジメントとして現状と課題について執行側より説明があり、当面の方向性が明確に打ち出されて、議論したことが強く印象に残っております。また、非財務情報の開示がますます重要になっております。当社は財務的価値だけでなく非財務的価値も重要と認識し、役員報酬への非財務指標の採用に関しては日本企業の中でも先行しておりますが、非財務情報の開示を高度化し、投資家からの理解も得ながら、企業価値を高めていくことも必要と考えております。

野原
さまざまなステークホルダーとの連携のもと、データを活用しながらイノベーションを起こし、幅広いヘルスケア・ソリューションを提供することについて、取締役会メンバーで議論しております。患者さんの視点を重視することに加え、現状では治療を受けていない人に向けてもヘルスケア関連サービスを提供していくという考え方は、より大きな社会的価値を生み出すものであると感じております。

社外取締役(独立役員)釡 和明

非財務情報の開示を高度化し、投資家からの
理解も得ながら、企業価値を高めていくことも
必要と考えております。

社外取締役(独立役員)
釡 和明

当社グループの持続的な成長に向けて重要な点は何かお聞かせください。

宇治
基本は執行側がしっかりしているかという点に尽きると思いますが、執行を監督する取締役会として、世の中の動きから見て当社の動きが非常識になっていないか、より良い方向性はないか等、議論することが重要であると考えております。これまで、社外取締役が有する多様な経験・スキル等に基づく意見が、リスクマネジメント、環境に関する課題、Patient Centric Mindsetによる患者さんへの貢献、女性活躍推進、DX推進等に関する議論に反映されております。

多様な経験というコメントがありました。ご自身のバックグラウンドを踏まえ、当社グループの企業価値向上についてご意見をいただけますでしょうか。

野原
DXの推進が重要であると考えており、さらに取り組みを加速していくためには、専門人材の獲得・育成、グローバルでのデータ活用に向けた環境整備、イノベーションを起こす仕組みづくりが重要であると考えております。また、ダイバーシティ、特に女性活躍推進については、女性マネジメント職がネットワークを構築し経営陣とのコミュニケーションの機会を設ける等、いろいろな取り組みが行われておりますが、どのように女性幹部登用を加速することができるか、サポートしていきたいと考えております。


第5期中期経営計画の計数目標の必達が重要であり、財務や会計のバックグラウンドから、2025年度に向けて単年度業績についてもしっかり見ていきたいと思います。また、当社グループのグローバル化は重要事項です。グローバルでの事業運営、組織体制ができてきており、グローバル人材の育成にも取り組んでおりますが、今後、当社が向かうグローバル化の方向性について、しっかり議論していきたいと考えております。

社外取締役(独立役員)小松 康宏

これまでの臨床現場の知識と経験に加え、
医療をシステムとして捉える視点を活かし、
取締役会での議論に加わらせていただければと
思っております。

社外取締役(独立役員)
小松 康宏

2022年6月より取締役に就任された小松取締役に、期待されていると認識している役割、抱負、当社への印象等についてお聞かせください。

小松
昨年度のバリューレポート等を拝読し感銘を受けました。特に「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」というパーパスの実現に向けて会社全体で取り組んでいることが非常に素晴らしいと感じております。21世紀になって医学・医療の目的は、疾病の治療だけでなく、より良い人生の実現を支援することに広がっております。薬の開発は、その薬剤によって直接の恩恵を受ける患者さんに加えて、将来その疾患にかかるかもしれない健康な人々の安心にもつながります。私は、医学及び公衆衛生を専門としております。医学は、患者さん個人を対象にしますが、公衆衛生では、社会生態学モデルという考え方があり、疾患の予防や対策を講じる際に、患者さん個人、周囲の方々、地域やコミュニティー、さらには公共政策要因の全体像をとらえます。聖路加国際病院ならびに群馬大学病院において病院運営や医療の質・安全管理に携わる上で、公衆衛生の知識と経験が役立ちました。医療の質と安全を高めるために、多彩な人材と部所が有機的に協働できる仕組みをつくるという「クリニカル・ガバナンス」の視点は、企業価値を向上させるコーポレートガバナンスにもつながるものではないかと思っております。私のこれまでの臨床現場の知識と経験に加え、医療をシステムとして捉える視点を活かし、取締役会での議論に加わらせていただければと思っております。

最後に、本日の議論を振り返って、宇治議長からコメントをお願いいたします。

宇治
当社のガバナンスや持続的な成長に向けて重要な点などについて議論してきましたが、社外取締役の役割は今後ますます重要になると思います。当社グループのパーパスや2030年ビジョンを含む経営の方向性について共通の認識を持ちつつ、長期的視点を持った多面的で質の高い議論を深めてまいります。当社の最大の強みであるサイエンス&テクノロジーを活かしつつ激動する社会の変化に対応し、ESG経営を進めることで、当社の企業価値や社会的価値が向上できるよう、取締役会としても取り組んでいきたいと考えております。

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