メンタルヘルスを保つには 新型コロナウイルス感染症流行下で心がけたいこと

東北大学大学院医学系研究科
精神神経学分野 教授
富田 博秋(とみた ひろあき)先生

[プロフィール]
1989年岡山大学医学部卒業。カリフォルニア大学医学部留学、東北大学大学院准教授を経て、2018年より現職。2011年の東日本大震災以来、宮城県を中心に被災地の精神保健支援活動に従事。

新型コロナウイルス感染症流行が長引くにつれ、メンタルヘルスの不調を訴える人が増えています。感染への不安、日々の暮らしの急激な変化、先の見えない状況に対して、ストレスを感じる人が多いようです。東北大学災害精神医学分野教授の富田博秋先生は「人との交流の機会が減り、ストレス解消も難しくなっています。つらいと感じたら、一人で抱え込まずに早めに周囲のサポートを受けましょう」とアドバイスします。

先の見えない不安が増幅

Qコロナ禍でのメンタルヘルスの不調を訴える人は増えていますか?

A抑うつや不安が強くなり、気分が沈む、眠れない、生活の中に喜びを感じられないなどの症状を訴えて、外来を受診する患者さんが増えています。
感染への不安や恐怖、自粛による生活習慣の急激な変化、経済状態の悪化、感染者や濃厚接触者になったことへの自責の念など、新型コロナウイルス感染症の拡大によって、メンタルヘルスの不調を感じやすくなっています。こうした状況がいつまで続くのか、先が見えないことが、さらに悪化要因となっています。
かつては人とコミュニケーションをとることでストレスが解消できていた人も、人との交流の機会が減ってしまったことで、ためこんでしまうことが多いようです。

あらゆる人にリスク

Qとくにストレスを受けやすいのは、どんな人ですか?

Aもともとメンタルに問題を抱えていた人や持病がある人は、より強く不安を感じがちです。
今回のような誰もが経験したことのない状況は、あらゆる人にとってメンタルヘルスの不調に陥る可能性があるといえます。また、感染症対策にあたる医療従事者などは、強い緊張状態に長期間さらされることにより、メンタルヘルスの不調が悪化したり、症状が改善していたのに再発したりするケースもみられます。

体調の変化に注意

Q重症化しないための早期発見のポイントは?

A眠れない、食欲がないなどは代表的なメンタルヘルス不調のサインです。自分では不調と感じていなくても、考えがまとまらない、仕事の効率が落ちた、好きなことへの関心が低下した、口数が減ってきた、などの変化があったときは注意が必要です。自分では気づかないこともあるので、周囲が変化に気づいてあげることも大切です。

早めにかかりつけ医に相談を

Q不調に気づいたとき、どう対処すればよいですか?

A気軽に相談できる人がいて、回復できそうな見通しが立てばよいのですが、同じ状態が2週間続く場合は、早めにかかりつけ医に相談して下さい。眠れない、食事が美味しく感じられない、今まで楽しかったことも楽しめない、など気になっていることは何でも伝えるようにしましょう。かかりつけ医でも、軽い抑うつや不安なら対応できる場合が多いですし、重症な場合は専門の診療科に紹介してもらえます。
また、都道府県の精神保健福祉センターでは無料の電話相談を受け付けており、必要があれば医療機関につないでもらえます。一人で抱え込まず、社会的なサポートを受けましょう。

自分にも他人にも寛容に

Qメンタルヘルスを保つためのコツは?

A「心の健康は体の健康づくりから」というのが基本です。十分な睡眠、規則正しい食事、適度な運動を意識的に行い、生活のリズムを整えましょう。
その上で、嫌だな、しんどいな、と思うことがあったら、「こんなことを考えてはいけない」と自分の考えを否定せずに浮かんでくることをそのまま受け止めることが大切です。
できないことではなく、できていることに目を向けることも重要です。趣味のサークルやスポーツなどの活動が自粛され、人と会う機会が極端に減って、孤立してしまう人が多くいます。携帯電話やインターネットを活用して、人とのコミュニケーションを積極的にとるようにしましょう。



ドクターからのアドバイス

「外に向かっての活動が制限されている今、内面をみつめる機会ととらえましょう。これまでと同じ生活ができないという状況があるなかで、自分の好きなことは何なのか、人とどう関わりたいのか、などを改めて考え、内面を豊かにしていくための時間を大切にしましょう」

先が見えない新型コロナウイルス感染症の拡大で、日常生活にはさまざまな制約ができてしまいました。物理的に外と関わることが難しくなってしまった今、内面をいかに豊かにしていけるかを考える時期ではないでしょうか。
いま感じている不安やイライラは、起こるべくして起きている当然の反応です。大変な状況ではありますが、永遠に続くわけではありません。
先々の不安を強く感じてしまうときに役に立つのが、『マインドフルネス』の考え方です。マインドフルネスとは、いま、ここに意識を向ける、ということです。ゆっくり呼吸をして、自分の呼吸に意識を向ける。食事のときは、食べ物の色合い、形、香り、触感などに意識を向ける。など、その感覚を味わうようにします。
ストレスにさらされたとき、人に対してイライラして攻撃してしまうのは自然の反応です。こうした状況下では周囲の人を責めてしまいがちです。自分にも他人にも寛容になるコミュニケーションをおすすめします。相手を責めるのではなく自分が困っていることを、自分を主語にして伝えると、お互いがストレスにならずに円滑なコミュニケーションがとれるようになってきます。

企画・制作=読売新聞社広告局
2021年1月16日掲載

他の疾患啓発も見る

to Page Top