体調不良なら休む勇気を 冬場の発熱に備える

愛知医科大学大学院医学研究科
臨床感染症学 主任教授
三鴨 廣繁(みかも ひろしげ)先生

[プロフィール]
1989年岐阜大学医学部卒。ハーバード大学医学部留学、岐阜大学大学院 准教授を経て、2007年より現職。
第93回(2019年)日本感染症学会会長、第32回(2019年)日本外科感染症学会会長、第29回(2018年)日本臨床微生物学会総会長を務める。日本感染症学会・指導医、日本産科婦人科学会・指導医、日本化学療法学会・指導医など。

新型コロナウイルス感染症の拡大が続くなか、熱が出ると「感染したのでは?」と不安になる人が多いのではないでしょうか。これからの季節、風邪やインフルエンザなど熱の出る機会が増えてきます。愛知医科大学大学院医学研究科臨床感染症学主任教授の三鴨廣繁先生は「体調が悪いときは無理をせず、休む勇気を持ってほしい。熱が出たら、地域の感染症の流行状況をみて、受診前にはかかりつけ医に電話で相談を」と呼びかけます。

症状で見分けることは困難

Q熱が出た場合、どんな原因が考えられますか?

A発熱の原因の半分以上は風邪やインフルエンザなどの感染症ですが、膠原病や関節リウマチでも熱が出ます。ただ、今年は新型コロナウイルスという新しい感染症が出てきて、「熱が出たらコロナかもしれない」と思わざるを得ない状況です。自覚症状から判断できればよいのですが、発熱の程度や症状などから、原因を見分けることは困難です。

まずは電話で相談を

Q熱が出たら、かかりつけ医を受診してもいいですか?

A熱が出た場合、新型コロナウイルス感染症の可能性は否定できないため、従来のように気軽にかかりつけ医を受診することは避けなければなりません。住んでいる自治体の相談センターあるいはかかりつけ医にまずは電話で問い合わせ、感染予防策が整った外来のある医療機関を受診するようにして下さい。

地域の流行状況に適した対応を

Q発熱で受診した場合、どんな検査を行いますか?

A地域での新型コロナウイルス感染症、インフルエンザなどの感染状況によって、対応が異なります。両方が流行している地域では、出来る限り両方の検査を同時に行います。ただし、両方の検査を同時に行えない場合は、新型コロナウイルス感染症の流行状況によって、先にインフルエンザの検査を行い、陽性なら抗インフルエンザ薬による治療で経過をみることも考えられます。一般的には38℃以上の高熱が出た場合、インフルエンザを疑いますが、ワクチンを接種していれば37℃程度しか出ない場合もありますから、熱が高くなくてもインフルエンザの検査は行った方がよいでしょう。インフルエンザが陰性だった場合、新型コロナウイルスのPCR検査を行いますが、どの程度の患者さんが対象になるかは、各自治体の検査体制の整備状況によります。
また、インフルエンザワクチンは医療関係者や小児、高齢者、基礎疾患がある人などが優先になりますが、健康な人でも積極的に接種した方がよいでしょう。

治療薬が臨床試験中

Q新型コロナウイルス感染症の治療薬には、どんなものがありますか?

A軽症者に対して重症化予防効果が期待できる薬が現在臨床試験あるいは臨床研究中です。
重症者に対しては、抗ウイルス薬やステロイド薬が承認され、薬物治療も確立されつつあります。

マスク、手指消毒、室内の換気

Q感染を防ぐために、どんなことに気を付ければよいですか?

A新型コロナウイルスは発症日がウイルス排出のピークです。無症状でも感染力が強いことから、うつさない、うつらないための対策が不可欠です。
まずは、他の人と十分な距離をとり、室内ではこまめに換気するなど3つの密(密閉・密集・密接)を避けることが基本です。
公共の場では無症状の人も含めてマスクをする「ユニバーサルマスク」を徹底してください。会食でクラスターが発生しているのは、食事をしながら会話をするからです。どうしても会食をしなければならない場合には、食事を済ませたあとでマスクをつけて会話することが大切です。
石けんによる手洗いや手指消毒用アルコールによる消毒も怠らないよう注意が必要です。

ドクターからのアドバイス

「新型コロナウイルス感染症はインフルエンザよりも致死率が高く、後遺症の問題もあるようです。決して甘くみてはいけない疾患です。感染を広げないために、体調が悪いときは無理をせず、休む勇気を持つことが大切です」

新型コロナウイルスに感染した人には「自分は感染しない」と思っていた方も少なくありません。流行が長期化するにつれ、次第に「感染しても軽症なら問題ない」「風邪の一種だから」などと油断して、基本的な予防策もとらなくなってはいないでしょうか。
日本感染症学会によると、新型コロナウイルスの致死率(3~5%)はインフルエンザ(0.1%以下)の30~50倍に相当します。高齢者や基礎疾患のある人で重症化のリスクが高いとはいえ、健康な若い人でも重症化したケースはあります。元気に会話していた人が数時間後に急に体調が悪くなるケースもあります。また後遺症として、呼吸器症状、味覚、聴覚の異常、若年性の認知障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、急性腎障害なども報告されています。かからない、うつさないための予防策が不可欠です。
これからの季節は、風邪やインフルエンザなどで発熱の機会が増えてきます。日本人の多くは、多少の体調不良があっても頑張ってきたのではないでしょうか。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大が続くいま、これまでと同じ行動をとるわけにはいきません。ふだんと体調が違うときは無理をせず、外出せずに休む勇気を持ってほしい。周囲も休むことを許す雰囲気をつくらなければなりません。ニューノーマル(新しい日常)を生きていくのだという意識改革が必要です。

企画・制作=読売新聞社広告局
2020年11月28日掲載

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