自分にあった治療法を 胃がん治療最新情報

岐阜大学大学院
腫瘍外科学分野教授
吉田 和弘(よしだ かずひろ)先生

[プロフィール]
1984年広島大学医学部卒業。広島大学医学部附属病院・講師を経て2007年より現職。
2018年4月より岐阜大学医学部附属病院長。日本癌治療学会・副理事長、第57回(2019年)日本癌治療学会会長、日本消化器外科学会・監事、第15回(2017年)日本消化器外科学会大会会長、日本胃癌学会・理事、日本外科学会・指導医、日本食道学会・外科専門医、内視鏡外科学会・技術認定医など。

胃がんは日本人に多いがんとして知られていますが、亡くなる人の数は大幅に減ってきています。岐阜大学医学部附属病院・病院長の吉田和弘先生は「胃がんの早期発見が進み、治療法も大幅に進歩しています。あなたのことを一番よく知っている主治医との信頼関係を大切にして、自分にあった治療法を選びましょう」とアドバイスします。

死亡数は減少

Q胃がんにかかる人は減っていますか?

A全国がん登録による全国がん罹患データ(2017年)によると、胃がんにかかる人は男性で前立腺がんに次ぐ2位、女性は4位。男性に多く、50歳代から増え始め、80歳代がピークとなっています。
胃がんの原因となるピロリ菌の感染率の減少や除菌療法の普及によって、胃がんが撲滅できるのではないかと期待されていますが、まだ少し減ってきたという程度です。むしろ胃と食道の接合部にできるがんは増えており、依然として胃がんは日本人に多く注意が必要です。
一方、胃がんで亡くなる人の数は、大幅に減っています。がんの中で男女ともにトップの時期が長く続きましたが、2018年の人口動態統計によると、肺がん、大腸がんに次ぐ第3位となっています。

内視鏡検査が有効

Qどうすれば早期発見できますか?

A胃がんにかかっても自覚症状がないこともあり、早期発見のためには検査を受けることが不可欠です。胃X線検査(バリウム検査)も古くから行われていますが、早期がんの発見のために推奨されているのは内視鏡検査です。内視鏡検査が苦手という人には、鼻から挿入して比較的、楽に受けられる経鼻内視鏡検査という選択肢もあります。胃がん検診の受診率の向上によって早期発見が進み、胃がんの約半分はステージ1の早期の段階で見つかっています。

早期なら腹腔鏡下手術が可能

Q胃がんの治療にはどんな方法がありますか?

A胃がんの治療方法は、がんの進行の程度や全身の状態などを総合的に考慮して決定します。治療の基本は手術ですが、がんの大きさが約2センチ以下で胃の粘膜層にとどまっている場合は、内視鏡による粘膜下層切開剥離法(ESD)が可能です。
がんが胃の粘膜下層まで達している場合は外科手術が必要になります。早期がんなら腹部に小さい穴を数か所あけて、そこから手術用のスコープや器具を挿入して行う腹腔鏡下手術や、ロボット支援手術という選択肢があります。術後の回復も早く、傷も目立たないので、患者さんの負担が少ない手術法として全国のがん専門病院を中心に普及しています。熟練した技術が必要になりますが、日本内視鏡外科学会が技術認定を行い、審査に合格した医師をホームページ上に公表しています。
がんが筋層まで到達しているステージ2以上の進行がんの場合、開腹手術で胃切除とがん周辺にあるリンパ節切除を行い、術後補助化学療法を行います。

胃の粘膜層 イメージ

完治を目指せるケースも

Q手術ができない進行がんでも有効な治療法はありますか?

A遠隔転移のあるステージ4では、すぐに手術をしても根治できないため、抗がん剤治療が第一選択になります。がん細胞に特有の分子をピンポイントで攻撃する分子標的薬、がん細胞が免疫システムにかけるブレーキを解除する免疫チェックポイント阻害薬など新しい薬が登場し、治療成績も向上しています。抗がん剤治療が良く効いた場合には、治療戦略を転換し、完治を目指して手術を行う方法(コンバージョンセラピー)もあります。

ドクターからのアドバイス

「さまざまな情報にまどわされず、あなたのことを一番よく知っている主治医との信頼関係を大切にしましょう」

がんの治療を受けるとき、最先端の治療と標準治療のどちらを受けたいですか?と聞くと、ほとんどの人が最先端の治療と答えます。標準という言葉に惑わされがちですが、ガイドラインに示されたがんの標準治療こそが、現在の医学でわかっている最先端の治療なのです。胃がん治療の進歩は目覚ましく、かつては治療不可能と思われたケースでも、さまざまな治療法を組み合わせることで、根治できるようになってきました。
ご自身で新しい情報を得ることは重要ですが、インターネットで検索すると、がんの情報があふれていて戸惑うことがあるかもしれません。怖いのは、どの情報が正しいのかがわからないことです。「私はこれで治った」などの体験談は身近に感じやすいと思いますが、他の人に効果のあった治療法が自分に合うとは限りませんので、疑問に思うことや不安に感じることがあれば主治医に相談して解決しましょう。
あなたのことを一番よく知っているのは、現在治療を受けている主治医の先生です。主治医との信頼関係を大切に、前向きに治療に取り組んでほしいと思います。

企画・制作=読売新聞社広告局
2020年10月10日掲載

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