DoctorQ 専門医に聞く最新医療企画 ニューノーマル時代の生活習慣病 ~高血圧を予防するには~

今日のポイント ■コロナ禍での生活習慣の変化を上手く生かした対策を■日本人は「減塩」を心がけることが大切■運動と食事で生活習慣病を予防・改善

医療法人 八田内科医院 院長
八田 告先生

[プロフィール]
1992年島根大学医学部卒業、2006年腎臓センター長*1、10年臨床准教授*2、13年八田内科医院 院長・理事長、腎臓センター顧問*1、21年臨床教授*2、日本腎臓学会学術評議員、日本高血圧学会学術評議員
*1 近江八幡市立総合医療センター *2 京都府立医科大学

新型コロナウイルス感染症の流行(以下:コロナ禍)をきっかけに、人とのコミュニケーションが減り家で過ごす時間が増えるなど、生活様式は確実に変化しています。
この「ニューノーマル時代」でも、変わらず私たちの健康に悪影響を与えるのが、高血圧などの「生活習慣病」。その現状と対策について、八田 告先生に伺いました。

Qコロナ禍で生活習慣病は変わった?運動量が増えた?減った? 食べ過ぎは要注意!

高血圧、糖尿病、コレステロールが高くなる脂質異常症、痛風の原因となる高尿酸血症、どれも生活習慣の乱れが原因で発症する「生活習慣病」です。

生活習慣の乱れに要注意

生活習慣の乱れイメージ図

監修:八田 告 先生

最初は症状が現れることが少なく、病気だと気づきにくいですが、治療せずに放っておくと、脳卒中、心臓病、脳血管性の認知症、腎不全による人工透析などへと進行する恐れがあります。
コロナ禍で皆さんの生活には様々な変化があったと思いますが、時間に余裕ができジョギングなどの運動を始めた方は健康的になった一方、運動不足や間食が増えている方は悪影響が見られます。いわゆる「家飲み」も、つい飲みすぎてしまうようです。また、高齢者は他人と会話をしなくなり、刺激が減ったため、認知機能が落ちた方が増えている印象があります。

Q日本人は高血圧になりやすい?日本人の高血圧は塩分の影響を受けやすい 高血圧から脳卒中・心臓病・認知症に

高血圧の方の中には、塩分(ナトリウム)を取ることで血圧が高くなる「食塩感受性がある人」と、塩分を取っても血圧が高くならない「食塩非感受性」の人がいます。通常、取りすぎた塩分は腎臓から排泄されますが、「食塩感受性がある人」は、腎臓の塩分調節がうまくできません。結果、体に塩分が溜まりやすくなり、血圧を高くすることで塩分を体内から排泄させようとしているのです。日本人には、遺伝的に食塩感受性のある人が多く、このような人は、塩分を控えることが高血圧の改善につながります。
また、日本人には睡眠時無呼吸症候群の方が多く、高血圧の原因となっています。太っている方に限らず、治療しても血圧が下がらない、いびきをかく、足がむくむといった症状のある方、顎が小さく引っ込んでいる方は要注意です。思い当たる場合は、病院での検査をお勧めします。
では、注意が必要な血圧はどのくらいでしょうか?収縮期血圧/拡張期血圧が、診察室血圧で140/90mmHg、家庭血圧で135/85mmHgを超えると高血圧と診断され、治療が必要です。最近、診察室で120/80mmHg、家庭で115/75mmHg以上であっても病気になる可能性がわかってきました。これを、「正常高値血圧」といい、減塩や運動など、生活習慣の見直しが必要と考えられます。
血圧は正しく測ることが重要です。毎日、起床時と就寝前に1日2回、各回2回ずつ測定して平均値を取るのが理想的ですが、難しい方は起床時に測るのがよいでしょう。静かな部屋で正しい姿勢をとり、力を抜いて測りますが、深呼吸をすると高くなる場合があります。血圧計に連動したアプリを活用するのもよいでしょう。

正しい血圧の測り方※1

椅子に背筋を伸ばして座ります。
猫背はお腹が圧迫されて血圧が上がります。

カフと心臓を同じ高さにします 腕の力を抜きます

カフの位置はひじから指一本上、
強さは指一品入るぐらいに巻きます。

血圧測定イメージ図

※カフ(腕帯)が巻きやすいので、
利き手と反対の腕で計測してください。

そもそも、高血圧はなぜ健康に悪いのでしょうか。心臓をポンプ、血管はホースだと想像してください。たくさんの水を送り続けると、ポンプにもホースにも負担がかかります。これが高血圧の状態で、負担をかけ続けると血管は傷つきます。そこにプラークと呼ばれる脂肪の塊ができ、それが剝がれ血液にのって脳の血管に詰まると脳梗塞、心臓の血管に詰まれば心筋梗塞になります。また、高血圧状態が続くと心臓の壁は厚くなって動きが悪くなり、血管は硬くなります。弾力性のなくなった血管では血液が勢いよく流れ、脳の血管が破れて脳出血をおこすこともあります。脳の細い血管が詰まったり破れたりすると、脳血管性の認知症にもつながるのです。

Q高血圧は予防できる?運動は有酸素と筋トレの2つが必要。 食事は減塩! 野菜・果物・低脂肪乳製品を。

高血圧は、正しい食事と運動で予防できます。減塩、減量、運動、節酒で、高血圧は予防だけでなく、改善もするといわれています。皆さん、出汁やお酢、スパイスなどをうまく使って、食塩は1日6g(小さじ1杯)までに抑えることを心掛けましょう。野菜、果物、低脂肪乳製品を積極的に取ることも効果的です。
また、必要な運動は、有酸素運動と筋トレの2種類。足の筋肉を鍛えるスクワットは、足の血管を広げ血圧を安定させるのでお勧めです。高齢の方は転倒に注意し、椅子から立ち上がって座る「椅子スクワット」や、何かにつかまってやるといいでしょう。

生活習慣病の発症予防に効果的な身体活動と運動(18~64歳)※2

毎日歩行や掃除など合計60分以上の身体活動+1週間に合計60分以上のウォーキングやラジオ体操

毎日歩行や掃除など合計60分以上の身体活動+1週間に合計60分以上のウォーキングやラジオ体操

ところで、「血圧の薬は始めたらやめられない」とお考えの方もいますが、高い血圧はなるべく早く薬で下げたほうが安心です。ただし、薬で血圧が下がっても勝手にやめてはいけません。薬は高血圧を根本的に治してはくれません。そして、複数の薬を飲んでいる方は、飲み合わせにも注意。特に他院でも薬をもらっている場合は医師、薬剤師に相談してください。
根本的に高血圧を治すには、生活習慣を変える必要があります。薬などで血圧をコントロールしながら、同時に生活習慣を改めていけば、薬の量を減らせるかもしれないのです。
皆さん、コロナ禍でも季節は巡り、自然は変わらず美しい姿を見せてくれています。まずは、ウォーキングなどリラックスしてできる日々の運動から始めてみてはいかがでしょう。

※1:一般向け「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子より作成 https://www.jpnsh.jp/data/jsh2019_gen.pdf
※2:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイトより作成 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/exercise/s-01-001.html

企画・制作=朝日新聞社メディアビジネス局
2022年1月23日掲載

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