DoctorQ 専門医に聞く最新医療企画 生涯現役を目指して ~今日からはじめる「ロコモ」対策~

今日のポイント ■あらゆる年齢で運動不足に注意■新型コロナでの自粛でロコモが悪化■運動と食事でロコモの予防・改善

自治医科大学 整形外科 教授
竹下 克志先生

[プロフィール]
1987年東京大学医学部卒業、2012年同大学 整形外科 准教授を経て、2014年より自治医科大学 整形外科教授に就任。日本整形外科学会副理事長のほか、日本側弯症学会 理事、日本運動器疼痛学会 常務理事。

新型コロナウイルス感染症(以下:新型コロナ)対策でステイホームとなり、久しぶりに外出したところ駅の階段を駆け上がることができなかった・・・そんな話を耳にします。これも「ロコモティブシンドローム」(以下:ロコモ)と呼ばれる状態の始まりかもしれません。将来、寝たきり生活になってしまう原因にもなりうる意外に身近なロコモについて、その症状や対策を竹下克志先生に伺いました。

Qロコモって何?どんな人がなるの?「動く力が衰える」のがロコモ。高齢者に多く、若くても可能性が

ロコモとは、骨や筋肉の障害によって、立つ、歩くなど、移動する力が衰えた状態をいいます。原因としては、骨粗鬆症や変形性関節症などの骨や関節の病気のほかに、加齢による老化や運動不足で骨や筋肉の機能が衰えることもあげられます。高齢者に多く、寝たきりの原因にもなるため注意が必要となるのです。最近は、若い方でもロコモになります。小・中学生ではゲームや塾通いなどで運動量が減ったことから、「子どもロコモ」も増えています。反対に、小さいころから特定のスポーツばかりをしていると骨に負担がかかったり、そのスポーツで使う筋肉以外が鍛えられなくなることでロコモになる子どももいます。がんや心臓病と比べてロコモは「緊急性がない」と感じるかもしれませんが、それは違います。動けなくなることで、その先の生活が大きく変わってきてしまうからです。
「私は大丈夫かしら?」と思ったら、次の項目をチェックしてみましょう。1つでも該当すれば、ロコモの可能性があります。

ロコモの診断※1

  • □ 片脚立ちで靴下がはけない
  • □ 家の中でつまずいたりすべったりする
  • □ 階段を上がるのに手すりが必要である
  • □ 家のやや重い仕事が困難である(掃除機の使用、布団の上げ下ろしなど)
  • □ 2kg程度の買い物をして持ち帰るのが困難である(1Lの牛乳パック2個程度)
  • □ 15分くらい続けて歩くことができない
  • □ 横断歩道を青信号で渡りきれない

高齢者イメージ画像

Qロコモ対策は、いつから?何を?病院に行った方がいいの?高齢者も若者も、運動量が減ったタイミングがロコモ対策をはじめるとき

加齢により骨や筋肉は衰えてくるので、高齢者は当然、要注意です。一方、年齢を問わず、運動不足はロコモの原因となります。就職や結婚、転勤などで運動量が減った方や、退職して家にいることが多くなった方、さらに、肥満の方は注意が必要です。そして、女性では、妊娠・出産、閉経も気を付けたほうがいいライフイベントです。骨の健康には女性ホルモンが欠かせないことから、骨粗鬆症につながる可能性があります。
ロコモかどうかを確かめるには『Try!40cm』(トライ・フォーティ)という簡単なテストが参考になります。高さ40cmの椅子から片足で立ち上がることができれば合格。できない方はロコモになりはじめているかもしれません。

try!40cm ロゴ

ロコモ度テスト立ち上がりテスト※1

片脚の場合

あくまで一例です
両脚の場合や台の高さや測定方法など様々です
詳しくはサイト※1をご確認ください

ロコモ度テスト立ち上がりテスト 図

ロコモ対策の基本は、食事と運動。規則正しくバランスの取れた食生活を心がけましょう。特に高齢者は、筋肉を作るためのタンパク質が不足しがちなので注意してください。衰えた筋肉を取り戻すには、やはり運動が大切ですが、年齢とともに元に戻すには時間がかかります。子どもは数日で戻っても、高齢者では年単位の時間がかかる場合もあるのです。
筋肉を作るために必要な運動量はそれまでの生活状況によって異なってきます。運動を続けてきた方では運動量の維持や増加を考えますが、全く運動をしてこなかった方は、散歩程度から始めるのがよいでしょう。歩くのが辛い場合は、軽いスクワットと片足立ちが有効です。

ロコトレ※1

スクワット

5~6回で1セット/1日3セット

スクワット 図

片脚立ち

左右とも1分間で1セット/1日3セット

片脚立ち 図

足腰の筋肉とバランス感覚を効率よく鍛えることができるからです。また、水中歩行は関節への負担が少ないので、プールを利用するという方法もあります。
ただし、ひざや腰、背中などに痛みのある方は、治療が必要な骨の病気が隠れているかもしれません。それに、痛みのある状態では、運動する意欲は湧かないものです。まず、近所の整形外科を受診して痛みの治療をして、その上で、どのような運動が適しているか医師にアドバイスをもらうのがよいでしょう。残念ながら筋肉の衰えを治せる薬はまだありませんが、骨粗鬆症には色々な種類の薬があります。特に女性は、閉経が近づく40代後半になったら定期的に骨密度をチェックして、医師に相談することも考えてみましょう。

Q新型コロナもロコモに影響?ロコモに対する心構えは?人生100年時代。自分で動いて楽しく過ごすために、いつも楽しく運動を!

新型コロナの影響による運動不足が、ロコモを悪化させているというアンケート結果があります。影響は高齢になるほど大きくなり、小・中学生でも見られます。80代以上では3割近くの方に「つまずきやすくなった」、「速く歩けなくなった」といった症状が認められています※2。高齢になれば、介護が必要となることもあります。そうなっても、介護する家族のためにリハビリテーションなどの介護サービスを利用して運動能力を取り戻す気持ちを忘れないでください。
動くことは楽しいことです。心と体は表裏一体で、心が健康だと運動することに前向きになり、運動することが心の健康にもつながります。学生時代に経験した運動を再度始めてもよいですし、地域のスポーツ教室を探すのもよいのではないでしょうか。1人でもいいですし、友達と誘い合えば楽しみも増えてより継続しやすくなります。コロナやロコモに負けないで、生涯現役を目指してさっそく運動を始めてみてはいかがでしょうか。

※1:日本整形外科学会 ロコモティブシンドローム予防啓発公式サイト https://locomo-joa.jp/check/test/stand-up.html
※2:二階堂 元重ほか; 日本運動器学会誌2020; 31(3): 246-255

企画・制作=朝日新聞社メディアビジネス局
2021年11月13日掲載

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