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医療アクセスの拡大

医療アクセスの拡大は製薬企業の重要な使命の一つです。
開発途上国におけるグローバルヘルスや、先進国における難病・希少疾患に対する医薬品アクセスなど、健康と医療に関する社会課題の解決に向け、第一三共のリソースを有効活用し、貢献していきます。

基本的な考え方

国連加盟国が採択した持続可能な開発目標(SDGs※1)は、グローバルに取り組むべき17の目標のうち、保健分野については目標3において「あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を推進する」と定めています。第一三共グループは、自社の研究開発に加えて、外部研究機関とのパートナリングによる医薬品の創出や開発途上国における医療アクセスを改善する取り組みを通じ、この目標3に資する活動に取り組んでいます。
当社グループは、第4期中期経営計画でグローバルヘルスの取り組みの方向性を明確にし、2017年4月、CSR部内にグローバルヘルスチームを立ち上げました。研究開発、製薬技術、製造、販売、安全性管理など各部門の活動を、事業全体の課題として横断的に取りまとめ、事業とより一体となったグローバルヘルスに取り組みます。
開発途上国における医薬品アクセスを阻害する要因は、医療保険制度や医療インフラの未整備、医薬品の製造・品質管理や医療従事者の人材不足などさまざまです。それらの課題への取り組みを通じて、企業理念「革新的医薬品を継続的に創出し、多様な医療ニーズに応える医薬品を提供することで、世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する。」を実現します。
また、知的財産権と開発途上国における医薬品アクセスについては、下記に定めています。

  • ※1 Sustainable Development Goalsの略

知的財産権と開発途上国における医薬品アクセスについての考え方

持続可能な開発目標(SDGs)

取り組み事例

Access Accelerated イニシアティブへの参画

日米欧の製薬企業22社が、世界銀行および国際対がん連合と連携し、低所得国および低中所得国 の非感染性疾患(NCDs※2)の予防や診断、治療等の改善に取り組むことを目的としたAccess Accelerated イニシアティブに参画しています。

Access Acceleratedイニシアティブは、SDGsの目標3のターゲットの一つに掲げられている「2030年までにNCDsによる若年死亡率を予防や治療を通じて3分の1減少させ、精神保健および福祉を促進する。」ことの達成に向けて取り組みます。

  • ※2 Non-Communicable Diseasesの略。がん、循環器疾患、慢性呼吸器疾患、糖尿病などの非感染性疾患

本イニシアティブへの参画にあたり、当社CEOからのビデオメッセージをご覧ください。

Access Accelerated イニシアティブ

当社の医療アクセスの改善の取り組みについては、下記に記載しています。

タンザニアにおける移動診療サービスの継続実施

タンザニアでは、医師不足や病院へのアクセスが悪いなどの医療インフラが未整備の地域に貢献するために、NGO、現地政府、地域社会と協力し移動診療サービスを行っています。
当社は、乳幼児死亡率と妊産婦死亡率が高く、医療アクセス上の課題がある地域において、2011年から移動診療サービスを展開し、当該地域における乳幼児のワクチン接種率の向上および妊産婦健診の受診率の向上などに貢献してきました。
2016年度からは、新たな活動地域として、タンザニアのキロンベロ県にて、当サービスを継続し、2017年2月にはキックオフセレモニーを開催しました。SDGsの目標3の達成に焦点をあてた活動として、乳幼児のワクチン接種率の向上や妊産婦健診の受診率の向上などに取り組みます。また、これらの活動を支えるために、活動をサポートできるコミュニティ保健員の育成にも注力していきます。

キックオフセレモニーを開催

タンザニアの巡回医療イメージ

活動内容、これまでの活動報告については、下記をご覧ください。

中国における保健人材の育成

2015年7月から、発育阻害児童の多い雲南省廣南県の6カ所の郷(約6万世帯)を対象に「母子の健康改善に資する保健人材の育成」と「地域住民に対する保健教育活動」への取り組みを行っています。5年間の活動において、小児疾患統合管理研修(IMCI※3トレーニング)の実施による保健人材の育成やコミュニティーセンター設置による地域住民の疾患対応能力向上のための保健教育を行い、当地域における5歳未満児の健康・栄養状態の改善を目指します。
これまでに、約260名の保健医療従事者(村医)がIMCIトレーニングを受講し、小児の疾患への対応、乳幼児へのケアなどについて学びました。また、6カ所の郷すべてにコミュニティーセンターを開設し、保護者向けの意識啓発活動を行っており、2年間で約6,200人の地域住民が活動に参加しました。IMCIトレーニングを受講した村医の活動も始まり、さらに住民の活動の充実が期待できます。

  • ※3 Integrated Management of Childhood Illnessの略

活動報告

  2015年 2016年
IMCIトレーニング受講者数 190人 67人
コミュニティーセンター活動参加者数 1,600人 4,613人

取り組みの詳細については、下記をご覧ください。

グローバルヘルス技術振興基金「GHIT Fund」への参画

開発途上国における感染症を制圧するための創薬促進に向け、2013年4月に日本国政府、製薬企業6社、ビル&メリンダ ・ゲイツ財団による日本発の官民連携パートナーシップとして設立された公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金「GHIT Fund」に設立当初より資金拠出しています。
また、当ファンドにおいて結核、マラリア、および顧みられない熱帯病(NTDs※4)であるリーシュマニア症・シャーガス病の候補物探索のためのスクリーニングプログラムに自社ライブラリー(低分子・天然物)を用いて共同研究を進めており、マラリアはリード化合物最適化ステージ、結核およびリーシュマニア症 ・ シャーガス病はリード化合物創出ステージに進展しています(下記VOICE参照)。

  • ※4 Neglected Tropical Diseasesの略

官×企業×市民

公益社団法人 グローバルヘルス技術振興基金「GHIT Fund」

【VOICE】グローバルヘルスで社内外に認められる結果を残したい

渡辺 剛史第一三共株式会社
研究開発本部
研究統括部
創薬化学グループ
渡辺 剛史

2013年のGHIT Fund設立時から当社はグローバルヘルスにかかわる治療薬の探索プロジェクトに参画してきました。当社独自の化合物のスクリーニングから段階的に研究を進め、現在はマラリア、結核、NTDs(リーシュマニア症・シャーガス病)の治療薬の探索研究を実施しています。いずれも初期ステージの研究ですが、当社の創薬の知見を最大限に活かし患者さんを救うために、当社の研究チームと共同研究先が協力して精力的に研究を進めています。これらの活動の認知度はまだ低いですが、将来的に「第一三共は世界のさまざまなステークホルダーに対して真摯に関与し貢献している」と社内外の方々に認めていただけるような結果を残したいと強く思っています。

希少疾患への取り組み

先進国においては予防医療や希少疾患に関する課題が存在します。2017年4月、Orphan Disease Treatment Institute※5と共同で開発しているDS-5141(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療剤)が先駆け審査指定制度※6の対象品目に指定されました。また、ビオプテン※7、メチレンブルー※8、ギャバロン髄注※9などの希少疾病用医薬品を提供しています。

  • ※5 株式会社産業革新機構と三菱UFJキャピタル株式会社の運用するファンドと当社との共同投資による会社
  • ※6 生命に重大な影響がある重篤な疾患等に対して極めて高い有効性が期待される医薬品を指定し、世界でも最先端の治療薬を最も早く日本の患者に提供することを目指す制度
  • ※7 天然型テトラヒドロビオプテリン製剤
  • ※8 中毒性メトヘモグロビン血症の治療剤
  • ※9 バクロフェンを作用部位である脊髄の周囲へ直接投与することにより、痙縮をやわらげるITB療法に使用される薬剤

MRワクチン※10の製造に関する技術協力

北里第一三共ワクチン(KDSV)は、ベトナム・日本両政府間による国際協力事業として、ベトナムのハノイ市において、2006年3月から2010年3月まで実施されたPOLYVAC※11への「麻疹ワクチン製造基盤技術移転プロジェクト」の技術協力に続き、2013年5月より5年間の契約で、MRワクチン製造技術移転プロジェクトを実施しています。2016年度には、販売承認申請を行い、2017年3月に承認されました。
また、KDSVは、当プロジェクトの貢献がベトナム国において高く評価され、2017年9月、ベトナム社会主義共和国保健省において、ベトナム国の医療、または組織に、その功績を称える最も名誉ある「保健大臣賞」を受賞しました。
KDSVは、ベトナムにおけるMRワクチンの自国での安定生産体制構築を通じ、同国の麻しんおよび風しん感染症制圧に貢献していきます。

ベトナム国「保健大臣賞」受賞のお知らせ

  • ※10 麻疹風疹混合ワクチン
  • ※11 ベトナムのワクチン公社であるワクチン・生物製剤研究・製造センター

ベトナム保健大臣表彰状

ベトナム保健大臣表彰状

ベトナム保健省との記念撮影

ベトナム保健省との記念撮影

偽造医薬品等への対応

医療用医薬品の流通の効率化やトレーサビリティ強化を図るため、2021年までに表示が義務化された、販売包装単位及び元梱包装単位への有効期限ならびに製造番号情報を含むGS1コード対応について、当社は早くからこれに取り組み、既に8割以上の製品に対応を完了しています。先般、日本国内で発生した偽造薬の流通という医薬品に対する国民の信頼を損ないかねない重大な事案を受け、製造から販売まで一貫した偽造品の流通防止が喫緊の課題となっています。製造販売業者に求められる役割とは何かを考え、製品リスクに応じて対策を強化する必要があり、今後、製薬業界および関係団体と連携して、防止策について検討していきます。
また、シリアライゼーションが義務化されつつある欧米等諸外国においては、その国ごとに的確な包装対応を進めています。
医薬品の保管・輸送時の信頼性保証を高めるべくGDP※12への対応も積極的に推進しています。さらに、グローバルな品質保証システムや監査プログラムの導入による偽造品の防止を目的としたグローバル製薬メーカーとサプライヤーのコンソーシアムであるRx-360にも加盟しています。グローバル課題である偽造医薬品対策を各国・地域の規制に合わせて的確に対応し、患者さんのお手元に、安全にお薬を届けるべく、日々研鑽を重ねています。

  • ※12 Good Distribution Practiceの略。医薬品の適正流通基準

患者支援プログラム(米国)

当社の医薬品を、それを必要とする患者さんに確実にお届けすることは、革新的な治療法の開発への取り組みと同様に重要です。当社の米国子会社である第一三共Inc.では処方薬支援プログラムを通じて、アメリカの何千人もの患者さんが第一三共Inc.の医薬品を使用することを可能にしてきました。
Daiichi Sankyo Open Care Programは、第一三共Inc.の医薬品を処方された無保険や十分な保険給付を受けられない患者さんへ、無償で医薬品を提供しています。
また、第一三共Inc.は米国研究製薬工業協会(PhRMA)のメンバーとして処方薬支援パートナーシップ(PPA)に参画しています。PPAは、製薬会社と医療関係者、患者団体、コミュニティグループなどによる連合体組織です。PPAは、患者さんが利用可能な支援プログラムとその適格性を確認し、申請することをサポートしています。

臨床試験データの開示

当社は幅広い関係者に対し、当社が治験依頼者として実施する臨床試験の情報を適切に開示することは重要な意義があると認識し、情報の開示を積極的に進めています。これまでに、各国の規制ならびに各業界団体から示される指針・見解に従って、臨床試験とその結果に関する情報を、各種データベースを通じて登録・公開してきました。これに加え、外部の研究者に対して臨床試験データを提供することが、医薬品への理解を深め、科学的知見をさらに広め、ひいては患者さんのための医療の発展に繋がるなど重要な意義があると考え、2016年2 月より、データ開示ポータルclinicalstudydatarequest.com を利用した臨床試験データの開示を始めました。このポータルを利用することにより、外部の研究者は、定められたプロセスの下、個人情報保護のために匿名化された臨床試験データの閲覧・解析が可能となりました。

第一三共株式会社